ソードバスター 第一章




第二話

「ソード、やっぱりお前はすげぇよ!」
「お前みたいな奴と一緒の空気がすえて幸せだぜ!」
「サインくれ、ソード!」
 スピアーの下僕共が群がってくる。俺様は基地に帰還したところだ。
真っ赤なじゅうたんがしいてあり、俺様はその上を堂々と進む。隊員のみんなは両側でアーチを作る。
舞い散る紙ふぶきの中基地に入ると、そこにはスピアーの幹部が揃っている。
「今日の勝利は全てソードさんの力ですね」
 ラスターが目を輝かせながらいう。
「本当ぞくぞくしたぜ。お前の戦いっぷりはすごい。さすが天才は違うな」
 隊長が相変わらずのむさい顔でいう。
「がはははは、俺様にかかればこんなもの楽勝だぜ」
 うーん、実に爽快だ。
「これからも俺様を目標に訓練することだな。ま、それでも俺様は永遠にナンバーワンだぞ。天才だからそういう風に決まってるんだ。」
 いや、天才なのは事実だが、俺様はちゃんと努力もしているぞ。
例えば・・・例えば・・・ そうだ、毎朝素振りをしている。
朝に眠たいのを我慢して特訓しているのだ。がはははは。
「ソード君、見直したわ。まだまだ子供だと思ってたのに、いつの間にかすっごく強くなっちゃってるんだから」
 ミハルさん、やっと気付いてくれたのか。
「私、感動しちゃった。あんなにかっこいい人見たのは初めてよ。隊長よりもずっとかっこよかった」
 あんなゴリラーマンと比べられてもうれしくもなんともない。
「それでね、私、ソード君を好きになっちゃったみたいなの。私、ソード君のものになりたい」
 え?
「思い出すたびにアソコがしびれちゃうの」
 は?
「もう我慢できないの・・・お願い、今晩私の部屋に来てほしい・・・ 駄目かな?」
 こ、これはチャンスだ! や、やったぁ、さすがは俺様だぜ!
「準備ができたら、トランペットを吹くから、聞こえたらはいってきてね」
トランペットが聞こえたら準備OKなのか。そうか、女はトランペットが身だし並だもんな・・・
 まだか、まだか、まだか、まだか・・・ ぱぱぱぱっぱぱーー
聞こえた! ミハルさん、今行くぜぇ!
 
どこかで笛の音聞こえたような気がする。いったい何の音だろうか。ただ少なくともトランペットの音じゃない。
(あれ・・・? ここは?)
 どこか生臭い香りが漂っている。空には三日月がかかっていて、月明かりが暗闇をほのかに照らしている。
(ミハルさん?)
 ミハルさんはいない。それどころかスピアーの面々も、たっている人影すらない。
(そうだ、思い出したぞ。俺様はバルタンをやっつけまくってから眠ってしまってたんだ。
そうだったぜ。ということは・・・さっきのは夢か)
 体を持ち上げる。軽く頭を振ってみる。どうやら少し意識がしっかりしてきた。
体中が痛いが、それでも何とか思うとおりに動かせる。足に力をいれてみる。
大丈夫だ、ちゃんと立てる。痛みはあるが、たいした痛みではない。
わき腹の傷もどうやらふさがったようだ、痛みがかなり引いている。
体が大分回復して衣類ことを確認すると、次第にソードはむかむかしてきた。
(あーもう、せっかく楽しい夢だったのに、何で邪魔しやがったんだ。どうせならミハルさんの一発やった後で目を覚ませばいいんじゃないか。俺様の楽しみを奪った罪は重いぜ)
 あたりを見渡して聞き耳を立てる。
 ぴぃぃぃぃぃ
 後ろの方野かなり遠くからさっきと同じような笛が響いたような気がする。。
(紛らわしい音だ。むかむかするぜ)
 ソードは音を目指して歩き始めた。雲に隠れているせいか、月明かりが暗くてあたりの様子はほとんど分からない。
それにしても、いったい今は何時ごろなのだろう。自分が眠ってからどのくらい経ったのだろう。
結局戦いはどちらが勝ったのだろうか。笛はとき時思い出したかのように音を立てる。
ぴぃぴぃ。
どうやら誰かが笛を鳴らしているのは間違いない。音が次第にはっきりとしてきた。
「誰かいるのか、いたら返事をしろ」
 笛が聞こえてきた方に声を掛けてみる。返事がない。
「誰かいるのは分かってるんだ」
 あたりを見渡しながらもう一度声を出す。それにしても、周りは死体ばかりが転がっている。
道理で不愉快な香りが漂っているわけだ。しかも、ほとんどの死体がエルマ軍制式の鎧をつけている。
バルタンの人間はほとんど倒れていない。笛の音は聞こえなくなってしまった。
(こっちから聞こえてきた感じがしたのだが、間違えたか。いや、確かにこちらから聞こえた)
と、十歩ほど離れたところの死体が少し動いたような気がした。近づいてみると、まだ生きている兵士だった。
どうやら足に怪我をしているらしい、いざるようにして進んでいる。どうやらソード君には気付いていないらしい。
「お前がさっきの笛を吹いたのか。どうして俺様が呼んでいるのに返事をしなかった。答えろ」
 ソードは、相手にしゃべる機会も与えずに高圧的に話しかけた。びくりとした兵士の進行が止まる。
ゆっくりと振り向いてこちらを見る。
「安心しろ。俺様は正義と平和を愛するナイスガイだ。足に怪我でもしているのか?」
「・・・貴様はバルタン人か? それともエルマ人か?」
 兵士はこちらに向き直ると尋ね返した。鎧の色はよくわからないが、形から判断するに、エルマのものではないようだ。
ということはバルタンの人間になるのだが、どうも品のいいというかかっこいい鎧をつけている。
細身のいかにも軽そうな胸板に、流線型のショルダーパッド、すらりとした篭手。
(こいつ、中々いいものをつけているじゃないか。見たところ体系も俺とあまり変わらない。身長も大体同じだ。珍しいな、バルタンの奴は皆大柄でむさい野郎ばかりだと思っていたが)
 兵士は確かに小柄で、線の細い体型だった。身長は155センチ位だろうか。軍人としては明らかに小柄な体格だ。
そして、ソードもまたその様な体格であった。ソードの身長は159センチ、体重58キロ。
スリーサイズこそはっきりとはしないが、いかにも小さかった。年齢は本人もわかっていない。
物心のついた頃にはもう一人ぼっちだった。
ただ、スピアーのメンバーになるために18歳と自称しているが、それでもせいぜい14歳程度にしか見えない。
 
      ・・・
    
「う、ううぅ」
バルタンの兵士リッカ・フラウアーは足の痛みで目を覚ました。どうも太陽は沈み、夜が迫っているのが分かる。
あたりはやけに静かで、動くものも何もない。体を起こそうとすると、足に激痛が走った。
「痛っ」
 足がまるで魔法瓶のように腫れ上がっている。これは痛むわけだ、間違いなく折れている、とリッカは確信した。
いや、それもどうやら両方の足が折れているようだ。痛むのは右足だけだが、左足に力を入れたとたん同じ痛みに襲われる。
「参ったなぁ、これじゃ動けない」
 つぶやいて辺りを見回す。誰もいない。これでは助けも呼べないし、動けもしない。
そもそもどうして自分がこんな状況にあるのかが思い出せない。頭もしたたか強打したようでずきずきと芯が痛む。
そうだ、どうして仲間がいないのだろう。自分は戦争に来ていたはずで、先鋒として真っ先に敵にぶつかっていったはずで・・・
(そうだ、真っ先にぶつかった剣士にいきなりやられたんだ。たった一人で小さい奴がこっちに突っ込んできて、散々暴れてどこかに走って行って・・・それで私たちが追いかけていったら)
 そこまで思い出して改めて憮然とする。自分たち。そう、少なくとも5人はいた。
5人で一人を囲み、叩き落そうとした瞬間に奴が視界から消えて・・・
(いきなり何か分からないけどすごい音がして、視界が煙にまかれて、そして)
 突然目の前に敵が現れた瞬間がフラッシュバックする。それはあまりに突然で、対処するには機敏に過ぎた。
それから先はよく覚えていない。多分其のときにこの怪我を負わされて、不覚にも気を失ってしまったのだろう。
ということは、自分は今回の戦いでいきなり気絶して後はずっとそのまんまだったことになる。
「戦って、何にもしないで気絶して、そのまま皆においていかれて、目が覚めたら動けないなんて! これでもBランク戦士なのに、何でこんなことになってるんだ!」
 悔しさとやるせなさがこみ上げてくる。バルタンでは強さこそ全てであり、弱者は強者に奉仕する存在でしかない。
そんな社会では戦争は、自分の強さをまわりに知らしめる絶好のチャンスなのだ。
たくさんの敵兵を屠り、隊や軍の者に知れ、論功褒章でAランク戦士になるチャンスがあったはずなのだ。
それを自分は無駄にしたばかりか、やはり自分が実線では使い物にならないことを証明した形になった、今回の戦いだった。
「これじゃ、皆に合わす顔がない・・・」
 皆とは誰のことだろうか。
それは父であり、兄であり、自分を取り巻くあらゆる兵士たちであり、バルタンの女性たちでもある。
当然ながら、単純に力だけで言うと、男の方が女よりも優れている。
それゆえにバルタンは極端な男性上位社会でもあるのだが、そんな中で女性の価値を高められるのは強い女すなわち戦いが優れている女だけだった。
リッカ・フラウアーは女の身でありながらBクラス戦士となった極めて稀な人間である。
女性の期待と、男性人のそねみ、嫉妬、蔑視を日々背負わなければいけない毎日だった。
 Bクラスだから、最高上位でないからこころないさまざまなまなざしをうける。
だからなんとしても今回の戦いで自分の力を見せ付け、Aクラス戦士にならなければならなかったのに、そんなことは夢のまた夢になってしまった。
きっとこれから自分はいろいろ後ろ指を差されるのだろう。思わず気分が暗くなる。
戦いで生き残れたのだからよしとしよう、そんな前向きな考えは浮かんでこなかった。
生きているだけでもすばらしいことなのに、そのすばらしさには気がつかない。
 もともと後ろ指を差されやすい家系ではあった。フレイアー家は名家であり、代々猛者を輩出してきた。
現にこのたびの戦争における司令官はフレイアー嫡子の男、ウェルトス・フレイアーである。
バルタンにあっては戦闘力と身分は密接に関係する。すなわち強いものは偉く、高貴になり、弱ければその逆が待っている。
そんな叔父の庇護があればこそ、女だてらにいっぱしにBクラス戦士をやっているというのが周りの大方の評価だった。
「それにしてもあいつ、凄かったな」
 ふとつぶやいていた。あいつとは、たった一人で突っ込んできて、自分を含むたくさんの塀を前に見事に切り抜けた戦士のことだ。
それはソードその人に他ならないが、ソードはまだ全く無名の戦士に過ぎない。バルタンの一兵士がしる由もない。
「あんなふうになりたい・・・」
 ふと無意識につぶやいた言葉。それは女剣士としての切実な願いである。
今までたくさんの人間と剣を交えてきたが、自分が目指す強さ、圧倒的な強さのイメージを作れないでいた。
ただ漠然と一対一では誰にも負けない人間を目標に努力してきたのが、間違っていたような気がしてくる。
戦士とは一人でたくさんの人間を打ち破れる存在かもしれない。
そんな奴は存在しないと思っていたが、どうやら存在してしまっているようだ。
「それよりも、早く本隊と合流しないと」
 そうだ、自分はこんなところでゆっくり物思いに沈んでいいような身分ではない。
やせてもかれてもBクラス戦士、多くの兵の手本とならねばいけない存在なのだ。
手本が気絶して戦場に置いてけぼりとなったとあらば、間違いなく降格ものだ。
一刻も早く帰還して自分の過ちを軽くしなければならない。
「誰かいないのか?」
懐から小笛を取り出して口に含む。これはバルタンの通信器具だ。
一度鳴らしたら退却だとか、戦地でのさまざまな取り決めがこの笛でなされる。その笛を取り出し、
「ここに負傷兵あり」
というメッセージを吹いてみた。誰も現れない、動きがない。平原とはここまで静かなものだったろうか。
月に雲が影ってくらいこともあるし、朽ちた鎧武者ばっかりで生臭い死臭があたりに立ち込める。
これでは、どうやって本隊に帰還すればいいのだろうか。
 作戦通りだと今頃本陣はエルマの首都に向かっているところだろう、もちろんこの会戦に勝っていればの話ではある。
ただ、リッカのなかではバルタンが負けることなどありえなかった。自分たちは強い、それはもはや確信だ。
何が強いって、兵一人一人の能力が格段に優れている。
それも、錬度、忠誠、隊形といった付随的要素において優れているのではなく、体力と技でもって他を圧倒しているだろう。
生粋のバルタン兵士であるマティは、バルタン統一戦争や今回のエルマ戦争における緒戦の多くに兵卒として参加していた。
参加するたびに自分を含む味方が敵を叩き潰すさまをまじまじと見ていた。
 ぴぃぃぃぃ
 もう一度笛を吹いてみる。よく考えてみると、この笛が味方の耳に届くとは限らない。
エルマの兵卒に聞こえて自分が捕虜になる可能性も十分にある。
捕虜になるならまだ良い、その場で殺される可能性も、後で見せしめに殺される可能性も捨てがたい。
となると、うかつにこんな音を立てるのはまずいか、そう考えたときだった。
「誰かいるのか、いたら返事をしろ」
 少しはなれたところから突然声が聞こえた。はっとして声のしたほうを見る。
雲が広いせいで分からないが、誰か助けに来てくれたのだろうか。
「誰かいるなら返事をしろ」
 声のしたほうに目を凝らすと、やけに小柄な影が見える。声もどことなく幼い。
「誰かいるのは分かってるんだ」
 少年に間違いないようだ。バルタンの兵士だろうか、それともエルマの兵士だろうか。
しかし、バルタンの兵士に子供はいないはずだ。
それは少年兵がいないということではなくて、兵士になるには満二十歳を超えていないといけないからなのだが、とにかくあんなに幼い声の戦士はいないだろう。
だいたい味方であれば笛による合図に対しては笛で答えるルールだった。
(私は今日どうかしてる、回りも確かめず敵に自分の居場所を教えたりして。どうしようか、どこかに隠れようか、それともここで倒れている振りをしようか)
 自分の足を見る。痛々しい足だ。真っ青になった箇所がいくつもある。
これではどんなに頑張ってもたいした距離は進めない。けれども、もしここで倒れた振りをしてもどうだろうか。
自分の周りには他には数人バルタン兵が倒れているだけだ。それも、自分以外は明らかに死体と分かるやられ様。
この場に留まっていても見つかる可能性は高い。どうしようかと踝を返したときだった。
「お前がさっきの笛を吹いたのか。どうして俺様が呼んでいるのに返事をしなかった。答えろ」
(え?)
 リッカは思わず上を見上げた。そこには・・・少年(ソード)がこっちを見下ろしている。
エルマ軍の風体でもない。そもそも剣すら手にしておらず、彼は軍人なのだろうか?
 そのとき雲が風に吹かれ、半月の明かりがあたりを照らす。見詰め合った二人の横顔も明かりに照らされる。
(子供? 子供じゃないか)
 身長は150センチほどだろうか、それほどもないのではないだろうか。
体つきは子供のそれではなく、均整の取れた青年のそれではある。
ただ、小さい。表情も、決して思慮深そうなものではなく、いかにも無謀で不敵そうな顔つきをしている。
と、リッカは少年と目があったのを感じた。少年が口を開いた。
「安心しろ、俺様は正義と平和を愛するナイスガイだ。足に怪我でもしているのか?」
     彼は何者なのだろうか。リッカにはよくわからない。敵なのだろうか? それから確かめないといけないだろう。
「・・・君はバルタンか? それともエルマのものか?」
「ふん、そんなことを教える必要はない。だいたいこっちの質問にまだ答えていないだろう。どうして返事をしなかったんだ、おかげで探すのに手間取ったではないか」
「そ、それは」
 顔には似合わない高飛車な台詞に思わずリッカはとまどう。
「君が敵か味方か分からないからだ」
「敵? そうか、そういえばお前は兵士だったな。で、やっぱりバルタンなのか」
「バルタンならばどうかするのか」
「そうだな、さくっと殺すかな」
 リッカの兜の内側に冷や汗が落ちる。何の武器も持たない、しかも少年の一言ではあるが、迫力がある。
「でもまぁ、今は戦いも終わったようだぜ。俺様も怪我人相手にどうこうする気はないしな。それにしても他の連中はどこに行ったんだ? 怪我人なのにほっとかれるなんてあんたも哀れだぜ」
「随分知ったような口を利くが、では君はここで何をしているのか? 戦場で何か探しものでもあるのか?」
 子供にこんな口を聞かれる筋合いはない。それに加えて自分は哀れなどでは決してない。
戦場で落ちこぼれた人間が放って置かれるのは、ある意味当然の結果ではないだろうか。
「俺様は・・・」
(そういえば、俺様はいったい何をしているんだ。ええと、さっき目が覚めて、それから笛の音の方に歩いてきて・・・ いわれてみると何もしてないな。何をするかも全然分からん。なんと答えるのがかっこいいのだ? まぁ適当なことでも言っておくか)
「俺様はバルタンの将軍を倒すためにやってきたのだ」
「な、なんだとっ」
「そうだ、それでどうやら逃げられたみたいだから追いかける途中だ。全く逃げ足の速い奴だぜ」
(思い出してみると、俺様は敵の偉い奴を倒したくて頑張っていた。それがやたら雑魚ばっかり相手にして終わってしまった。このままでは面白くないから、やっぱり初志貫徹しないと・・・って、そういえば戦いはどうなったんだ? よく考えたら何でここはこんなに静かなんだ? スピアーの皆は? ミハルさんはどうしたんだ?)
 ふと心に沸き起こった疑問。今まで考えなかったのが不思議なくらいである。
そうだ、自分以外誰も味方の見えない現状は変だ。戦場が移動したにしてもあまりに静か過ぎる。
ということは、お互いに全滅したのだろうか?
「で、では貴様は暗殺者かっ!」
「暗殺だと? そんなかっこ悪いことはしないぞ。戦場でぶつかってだな、こう、スパッと斬りつけるだろ、」
 ソードは右手を横に払った。そのまま手を上に上げ、振り下ろす。
「それから、こうだ。一気に切り下げて、殺す。それからこうやって、」
 首をはねるような手つき。
本人は美しい自分の戦闘シーンをイメージしているのかもしれないが、リッカから見ると、何がなんなのか分からない。
ただ、そのしぐさは先程までの高圧的なものではなく、無邪気そのものだった。
「すぱぱぱっと。これで俺様の勝利だ。というわけで、お前たちの大将は俺様にかかってやられる筈だった。運がよかったんだろうな、俺様に出会わなかったということは」
 胸を張って、自信満々にしゃべる。その口調は自分の発言に何の疑問も持っていない。
さっきから見ていると、リッカはこの少年にただの幼児性を感じてしまう。
(この子はひょっとしたらただの子供なのか? ふと考え込んだり、突然踊りだしたり、高笑いをしてみたり)
 少年の言動に翻弄されている自分が馬鹿らしくなってくる。そうだ、相手は何も考えていないのだ。ただの子供なのだ。
きっとエルマ側ではあるが、兵士だとかそんな存在ではなく、ただの民間人の息子でやんちゃな奴といったところだろう。
(うん、こんな変な子が人殺しなどできるはずがない。よく見ると、かわいらしい顔をしているじゃないか。敵意も感じないし、きっとこの子は悪い子じゃない)
「そうだ、お前はバルタンの片割れなんだろう? お前たちの将軍が今どこにいるのか知ってるんじゃないのか」
「残念だが知らないな。私が気付いたときにはこの辺りに味方はいなかった。なんだ、今から一人で戦いを挑むのか?」
 リッカの中で次第に警戒心が薄れてくる。言葉があまりにも無茶だ。
この子供はどんな教育を受けてきたのだろう、うそつきは泥棒の始まりとか、針千本飲ますとかおそわらなかったのだろうか。
「一人で、か。そうなんだ、何故だか知らんが俺様の部下共はどこかに行ってしまった。全く使えない連中だぜ。一人で突っ込むのもいいが、使えない部下を持つと苦労するぜ。一人で戦いを挑んでもいいが・・・まずは仲間に合流するか」
「少年、そんなに見栄を張らなくても素直にはぐれたといえばいいではないか」
 一度警戒心が解けてしまうと、この少年の言動はどうにも微笑ましい。
(なんだ、強がりばっかりじゃないか。さっきから聞いてるといかにも自分がスーパーマンみたいに話しているけれど、ようはあれだろう? 自分もここで仲間とはぐれて一人ぼっちなんだろう? いかにも自分がエルマ軍の一部みたいに話して入るけれど、それだって怪しいものじゃないか)
 一度相手に高をくくってしまうと、全てがたいしたことのない存在に思える。
この子だったらなんとでも言いくるめられそうだ。
「君がエルマのものかそうでないかはこの際気にしないことにする。それで、これからどうするんだ?」
「見栄? はぐれる? い、いや別にはぐれたわけではなくて、向こうが勝手にどこかに行っただけで」
「ははは、世間ではそれをはぐれるというのだ。まぁ戦場だからな、味方から離れること端を意味するのだが、生きていられただけ幸運だったよ。もっとも私は君が軍人だとは思っていないが」
「お前、急にしゃべるようになったじゃないか。 ・・・じゃあ、俺様をなんだと思っているんだ」
 少年の戸惑った顔。やっぱりこの子は軍人ではなかった。その顔は如何にもうそを見敗れれたいたずらっ子のそれだ。
「そうだな、戦争の痕を怖いもの見たさで見に来た、というところじゃないのか? そうしている内に、一緒に来た友達と離れ離れになって、そうこうするうちに笛の音が聞こえた。音の方に仲間がいると思ってきてみるとそこには私がいた。どうだ、違うかい?」

   ・・・
   
「どうだ、違うかい?」
 何を言ってるんだこいつは? 馬鹿か?
「いや、普通に違うぞ」
「ははは、隠さなくてもいいよ。ともかくこうして出会ったのも何かの縁だ。私は君の想像通り、バルタン軍のもので、名前は」
 ソードの言葉をまるで無視して話を続ける。さっきまでは何かおびえているような印象だったが、勘違いしていたか?
「おい、話を聞けよ」
「名前は、そうだな、リッカだ。よろしく、少年」
「話を聞けって」
 ソードはいらいらして思わずぶっ飛ばそうかと思った。
(俺様の話を無視するなんていい度胸だぜ。それにさっきからなんだ? 人のことを少年だとか戦場見物に来たとか、まるで馬鹿にしてるような感じがするぞ。怪我人だと思って何もしなかったが、結局バルタンの奴だからな、ただの馬鹿野郎なのか。どうする、こんなやつうっちゃってしまうか)
 そんなことを考え始めたソードにお構いもなくリッカは続けた。
「情けない話だが、私は君の言うとおり味方にはぐれてしまって困っている。どうも長いこと気を失っていたようでね」
「本当に情けないな」
 自分だって長いこと意識がなかったのはおんなじだ。
ただ眠っていたか気絶していたかの違いだけで、無防備という点で等しい。そんな自分を棚に上げる。
「はは、全くだ。君ははっきり物を言う少年だね」
 リッカとかいう、へなちょこ戦士が肩を落とす。少し傷ついたようだ。ははは、ザマーミロ。
「戦いは常に真剣勝負だ。そんな大事なときに意識を失うなんて猿以下だぜ」
 調子に乗って続ける。眠るのはいいが気絶は駄目だ、駄目だぞ、うん。
「まぁ、それはそれとして、君に頼みがあるのだが。その前に名前を教えてくれないか。いつまでも少年と呼ぶのは失礼だからね」
 分かっているじゃないか。俺様のようなナイスガイを捕まえて少年と呼ぶなんてガイキチ寸前だぜ。
「ソードだ。ソード・ブレードという。かっこいいだろう」
「ソード・ブレードか。いい名前だね」
 ミハルさんみたいな口の利き方をする。ということは、
(俺様を子ども扱いしているのだろうか?)
 少年と呼ばれている時点で十分子ども扱いされているのではあるが。
(・・・まあいい。こいつには俺様の実力が分からないだけだ。笑って許してやるのが大人ってものだろう)
「ソード君、私をバルタン本隊まで送り届けてくれないか? もしも君がエルマ兵だったとしても、そうでなくても決して悪いようにはしない。こう見えても私はそれなりに身分がある。お礼は十分にできると思うよ」
「なに?」
「この通り私は動けない。このまま助けを待つのもいいが、それではこれからの作戦に全く参加できなくなってしまう。それだけは避けたいんだ」
 こいつ、馬鹿だ。俺様率いるエルマ帝国が、まるで負けたような口調。
失礼を通り越して何も言う気が起きない。もうほっとこう・・・いや、まてよ。
(こいつの鎧、ほしい。俺様のはどこかで脱いでしまってそれっきりだからな。やっぱりあったほうが安心だ。怪我は痛い。死体から奪ってもいいが、汗臭くて汚い血だらけなんて真っ平だぜ。その点こいつのは綺麗だし、体格もあまり変わらないし、何より物がいい。俺様に使われた方が幸せだ、そうに決まってる)
「礼は、そうだな、軍隊に入りたいのならいい人を紹介してやるぞ。もっとも18を超えないと正式な軍人にはなれないが」
「ええい、だから俺様にはそんなもの必要ない! そんなもんいらん、替わりにその鎧をくれ。そうしたら手伝ってやる」
(ああ、武具を漁りに来ていたのか。それで私に目をつけたのか? なるほど、それなら納得がいくな。こんな少年が軍人であるはずもない)
 リッカはなんとなく自分の想像が当たったような気になった。そう、はじめからおかしいと思っていたのだ。
この子はただの少年だ。だったら、うまく言いくるめれば自分の足の替わりをしてくれるかもしれない。
そうだ、武器をえさにすればいいではないか。
「いいだろう。無事にバルタンまで送ってくれたら鎧でも何でもあげよう」
「いいや、今ほしい。今すぐくれ。だいたいそんなものつけてたら重いじゃないか。運んでやるんだからそれぐらいはしろ」
 ソードとしては運んでやる気など全くない。男と密着するなんて真っ平である。
たとえスピアーの仲間であっても気楽にしょってやる気にならない。面倒くさいことはしないに限る。
「俺様はまた後でここを通る。そのときアーマーは受け取る。だからさっさとはずせ」
(それもそうか、確かにこのままでは少々重いかもしれないな。不安は残るが、まあ信用してもいいだろう、子供なんだから)
 そう考えるとリッカはアーマーの留め金に手を掛けて内側からフックをはずし、右手、左手と順に抜き去る。
二つに割れたプレートを肩から地面に落とす。
(ようし、これで万事オウケイだ。後は兜を脱いだところに襲い掛かって、奪って、それでおしまいだ。うーん、完璧な計画だぜ)
 こてをとり、脛当てを落とす。一瞬うめき声が聞こえた気がした。そういえば足に怪我をしているんだった。
何気に足に眼をやる。すらりとして、それでいてたくましい足。グッドだ。そういえば、足だけではない。
腕も、体つきもどうもミハルさんを連想させる。全体的にすらっとしていてほっそりしていて、妙にむらむらさせる。
バルタン兵(男)にしては中々いけている奴だ。
(これで顔もかっこよかったら80点はいくな。いや、馬鹿だから10点減点で70点か)
 そんなことをふと思ったとき、胸に何かあるような感じがした。あれ? 
(え? お、おい、やけにこいつの胸はおおきいぞ。もしかして、こいつ?)
 兜を取る。短く揃った髪、切れ長の瞳。首を振ってこちらを見る仕草に艶がある。
「お前・・・もしかして女だったのか」
「ん? いかにも私は女だが? 声で分からなかったか、少年」
 美人である。いや、たぶん美人だ。
あまり月が明るくないので断言はできないが、いかにも剣士らしい均整の取れた、それでいて出るところはそれなりに強調されたフレーム。
気の強そうな、それでいてはかなげな瞳。
(おお、ベリーナイスだ。もらうものをもらったら放っておくつもりだったが・・・ いい女なら話は別だぜ!)
 戦いの後のけだるさがパタパタとどこかに飛んでいく。一暴れして落ち着いていた心にむらむらと炎が燃え上がる。
血が、集中する。力が沸きあがってくる。
(体格も、なんかミハルさんみたいでグッドだ。ようし、青姦ターイム!)
 リッカが兜を地面に落としたとき、ソード君はリッカに飛びついていた。
「きゃぁっ」
「がははは、リッカとかいったか? 俺様のセカンドソードでいかせてやるぜ!」
「き、貴様私を愚弄するのかっ」
「違う違う」
 リッカを押し倒しておいて、うえから抱きしめる。激しく暴れる手を押さえつけ、耳元でささやく。
「俺様に認められた女に対する礼儀だぜ。お前はかっこいい女だ。俺様に抱かれる権利がある!」
「何を血迷っているんだ、少年! はなせっ、離さないかっ。こらぁ、触るなっ」
 リッカは拳を作ると、ソードに向けた。
「ふふん」
 拳を難なくつかむ。掴んだ手に力を入れる。
「うぐっ」
「かわいいぜ、リッカちゃん」
「畜生、離さないかぁっ」
「リッカちゃん、女の子はもっとかわいらしくしゃべらないと」
 リッカは怒りと恥辱で真っ赤になった。第一ちゃん付けで呼ばれたことなど記憶にない。
全力で暴れる。しかし、あっさり押さえつけられてしまう。しかしあきらめない。
懸命に上半身に力を入れ、ソードを跳ね返そうと幾度も試みる。そうして数分も経っただろうか。懸命の抵抗ではある。
しかしどれもあっさり返されてしまう。力の差がありすぎるのだ。
リッカは足に怪我をしているが、それを差し置いてもあまりに力に差がある。まるで赤ちゃんと大人だ。
こんな少年に、何もできずに自分は蹂躙されてしまうのか?
(初めて、初めてなのにっ 何でこんな子供に好き放題されているんだっ)
「あんまり暴れると足が痛むんじゃないか? 優しくしてやるから心配するな」
(男なんて、オトコなんてっ! 勝手で強引で、私をいつもねじふせてっ 畜生っ、私はこんな少年にまで蹂躙される覚えはないぞ! 何のために鍛えてきたんだ、男に負けないためだろう? それとも、どんなに頑張っても、結局私は駄目なの・・・か・・・)
「ううううぅーー」
 何か声にならないうめき声だ。やっぱり怪我が痛むのかもしれない。
そして、それまで激しく抵抗していたのが急にシュンとなってしまう。しかし、そんなことでなえるようなセカンドソードではない。
ひるんだところをすかさず
 ばばばっ
と脱がしてしまう、というか破く。小ぶりだがいかにも張りのあるおっぱい。
 もにもに
なぜるようにして揉む。
 ぺろぺろ
吸い付く、舐める。うーん、デリシャス。そのまま舌を這わせ、肩甲骨、クビと舐めまくる。
犬もびっくりのぺろぺろ攻撃だ。平行して股間に手を伸ばす。スパッツを巧みに破いて、ショーツの上に手を遣る。
(足にはなるべく触れないようにしよう。ラブリーホールだけ愛撫愛撫)
 パンティの上から何度もなぜる。下着の感触が心地いい。セカンドソードはすでにマックスだ。
(もういいかな?)
 そのまま数分もしただろうか。
(そーろーそーろーだーなー)
 おっぱいに吸い付きながらソードは考える。当然、ろくなことは考えない。
そして、抵抗をやめたってことは、もう準備オッケーなのだろうと勝手に思い込む。
リッカも、すっかりおとなしくなり、なすがままだ。次の段階に移行してもいいだろう、おもむろに指を突っ込む。
「痛っ」
(あれ?)
 違和感を感じる。二つの違和感。
一つ目、どうも愛液の粘り具合が違う。
二つ目、なんか、すごく指が入りにくかった。
恐る恐る指を抜き、口に含む。愛液の、なんともいえない無味な味ではない、立派な鉄の味。血の味。
(あー、こいつ処女だったのか)
「おい、リッカちゃん。俺様が処女をもらってやるぜ、感謝し・・・」
 そういって、胸から顔を離し、ソードはリッカの顔を見て言おうとした。あれ、なんかものすごく怖い顔をしてないか?
 じいっとソードの眼を見て視線をそらさない。眼には涙が滲んでいるが、かなりの迫力だ。
 『少しでもぬらさないと、ただでさえ痛いんだから』とか、『俺様のつばですべりをよくしてやるぜ』とか、そんな言葉がさっきまでソードの頭の中を走り回っていたのに、急に自分の行為に罪悪感を感じてしまう。
「なー、泣くな。そんなに痛くはしないぞ。俺様はテクニシャンだからな、がははは」
 ノーリアクション。涙に濡れた眼でソードを睨んでいる。
「それに、自慢だが俺様のはビッグだ。気持ちいいぞー」
 ノーリアクション。
「まあ、とりあえず入れてみよう、そうしよう。少なくとも俺様は気持ちいいから、そういうことで」
 ちらりと上目でリッカを見る。悔しそうな瞳。
「・・・俺様とするのは嫌か?」
 ついそんなことを尋ねてしまった。こくり。リッカが小さく、しかし力強くうなずく。
「気持ちいいぞ?」
 首を振るリッカ。その断固とした仕草。うぐぐぐぐ。
(なんだ、まるでミハルさんにしかられたみたいな気分になってきたぜ)
 過去ソードが何回ミハルさんにアタックしたことか。押し倒したことも数知れない。
そのたびに自分に向けられるあの視線。それが、まさに今のリッカの視線である。
(くそっ、いい女なんだがなぁ。 ・・・うーむ、俺様のせっくすは、あくまで合意の上でなければならない。世界最強最高の男になって、それで世界中の女が俺様に抱かれたいと殺到するのが俺様の未来なんだ。嫌がる女を無理にやるのは格好悪い)
 しかし、もうセカンドソードはギンギンだ。女の子の涙はソードの心にほんの少し同情の気持ちを呼び込んだ。
だが、体は全く影響を受けていない。
(いや、昔の人は『嫌よ、嫌よも好きのうち』って言っていた。そうか、これは好きの裏返しだ!・・・なわけないよなぁ。でもなあ、もう準備しちゃったし、一発出さないとどうにもならないぞ、どうしようか・・・・・・って、ああもう面倒くさい!)
 一度ふんぎると、ソード君は迷わない。
 セックスばんざーい、ばんざーい、ばんざーい。
「がはははは、リッカちゃん今行くぜ!」
 しばらく何か考えていたソードが顔を上げたとき、そこにはいっぺんの曇りもなかった。
「前戯はもう十分だ。今から処女をいただく!」
 股間から自慢のセカンドソードを取り出す。
ひそかなソード君の自慢なのだが、今までに自分より大きかった人間は、スピアー隊長のゴリラだけだ。
伸縮自在で、最長三十センチ位だろうか。形も太さもまさに芸術品にふさわしい。
神様が創った最も美しい造詣だ、うーん、ビューティフル。
 リッカは目をつぶって唇をかんでいる。さすがに観念したのだろうか。
手はしっかりと拳を固め、少し血が滲んでいた。そんなリッカの様子はソードの眼には入らない。
(さすがにフェラは無理だろうな。あそこもそんなに濡れてなかったし、自分で濡らしとこ。 ぺぺぺっと、これでまぁなんとかなるか?)
 セカンドソードに唾をかける。やっぱり、痛いのはかわいそうだし、滑りのない感触なんてソードには気持ちよくない。
「レッツゴー」
「くああっ」
 いきなり全力で腰を打ち付ける。処女膜はやはり秒殺するに限る。こんな面倒くさいものは早いとこ破ってしまった方がいい。
唇をかんで声を抑えていたリッカの口から悲鳴が舞いあがる。
「痛い痛い、ひゃっ、あっ、ああー」
(さすがは処女だ、きっつううー。 ここまできついのは初めてだ、気持ちいいー)
 ソード君は感動すら覚えた。猛烈な快感がセカンドソード&ソードを包み込む。
(ぐおおおお、まだ出してたまるかあ)
 猛烈な速さで腰を振る。一突きするたびにセカンドソードが歓喜の渦に吸い込まれる。
「嫌ああっ、痛い、あうあううー」
 こみ上げる射精感を懸命に抑えるソード。こんなに早く出したくなるなんて久しぶりのことだ。
一方、先程まで静かに寝ていたとは別人のように激しく暴れるリッカ。
少年ごときに蹂躙されるショックに打ちのめされていた気持ちが、痛みとともにどこかへ飛んでいく。
そして、ソードに対する憎しみだけが痛みによって倍増される
(チクショウッ ソード、お前は許さない! 絶対に、絶対にこの報いは受けさせる!)
 ソードに貫かれ、その激しい動きにあわせて踊りながら、悲鳴を上げながら、リッカはそればかりを考えていた。

(ふひゅう、えがったー ・・・一発、二発、三発か。もうちょっとやりたかったけど、さすがに初めてでこれ以上は反則だろう)
 地面に、大の字に横になって、情事の余韻に浸るソード。あれからノンストップで合計三発の運動だ。
傍らでは中出しされて、膣から白い液体をこぼしたまま倒れているリッカ。
「本当は一発で済ますつもりだったんだぞ。リッカちゃんがあんまり気持ちいいから、三回も出してしまったんだ」
 返事はない。それはそうだろう、三発目の途中で、リッカは気を失ってしまったのだから。
(やっぱりセックスはいいな。剣もそれなりに楽しいが、なんか、充実感が全然違う。いい女とやった後は、俺様は幸せだぜ。リッカちゃんはいい女だ、俺様をここまで気持ちよくできる女なんてそうはいない)
 ちらりと横を見る。まだ意識が戻らないようだ。中だしされた自分に気がついたとき、いったいどんな反応をするのだろう。
ソードは胸や股間をむき出しにしているリッカを見ると立ち上がった。リッカは何も服を着ていない。
原因は全てソードにあるのだが・・・
 辺りを見回し、適当な身長の兵士の死体を捜しにいく。死体漁りなど、高貴な自分のすることではないが、今日は特別だ。
気温はそんなに寒くはないが、裸で過ごすには少し厳しい。どんなものでもいいから、適当に服を見繕ってやろう・・・
(これなんか、ちょうどいいかな)
 ソードの前にはエルマ兵の、小柄な兵士の死体がある。
(なんまんだ、なんまんだ)
 傍らにしゃがみこんで、ごそごそと鎧をはずす。男の服を脱がすという作業。これは、全然楽しくない。
だいたい、血で汚れているし、清潔とはいいがたい。
(下着もとっておくか? うーん、嫌だ、嫌過ぎる。よし、このシャツだけでいいか)
   シャツが中々脱がせられない。自分の服を脱ぐのはあんなに簡単なのに、どうして他人のはこうもややこしいんだろう?
 これが男じゃなくて女だったら、もう少し脱がし甲斐もあるのだが。
 キィィィーン
 遠くでラットパンサーの遠吠えが聞こえる。死骸だとか、弱った動物の肉をあさる中型の獣だ。
20〜30匹の群れで行動し、多数で弱者をいたぶりつくすように食べる。ソード嫌いな動物だ。
一匹一匹は弱いくせに、たくさん集まると俄然強気になるところなど、いかにもせこい。
多分、戦闘で死んだ人間でも食べに来たんだろう。全く、獣の癖に人間様を食べようなんて、不愉快な獣だ。
 何とかシャツを脱がすことに成功した。上半身裸にされた死体に合掌し、リッカのいるところへ戻る。
まだ気を失ったままのようだ。
(とりあえず、服を着せてやるか)
 上半身を起こし、拾ってきた服を腕に通そうとする。そのとき、
「ん、ううん・・・」
 声を漏らして表情がゆれた。
「お、眼が覚めたか?」
 ぺちぺち。軽くほっぺたをたたいてみる。眼を開くリッカ。
「お目覚めのキッスだ」
 ちゅっ
 まだぼんやりとしている唇を奪う。さらに舌を入れ、ふんわりした感触を堪能だ。
と、ぼんやりしていた眼が急にきりりとなった。同時に脇から吹き出る殺気。
「おっと、甘い甘い」
 口を離し、額に飛んで来た平手を受け止める。さすがに軍人だけ会って、鋭い平手だ。
「なんだ、キスは苦手か? まあいい、とにかくじっとしてろ、今服を着せてやるからな」
「調子に乗るな! 私を侮辱しただけでは気がすまないのか!」
 じたばたと暴れるリッカ。
「侮辱なんかしていない。それどころかいっぱい褒めてやるぞ。リッカちゃんはすごくよかった。はっきり言って今まで俺様に認められた女の中でも五本の指に入る!」
「それが侮辱だというんだっ」
「そうなのか? じゃぁ、リッカちゃんのあそこは真っ黒で形も変で、臭い最悪の穴だって言おうか?」
「黙れ、死ねっ、地獄へ落ちろっ」
 一眠りして元気になったのだろうか、一発やる前よりはるかに力が入っている。
たいていの女はソードとやると疲れてぐったりとしてしまうのに。
(こいつ、ほんとに歩けないのかぁ? 確かに下半身は無抵抗だが、すごい体力だな。 さすが、鍛えている女は違うぜ。体力がたくさんあるというのはすばらしいことだぞ。なぜなら俺様と何ラウンドもできるんだからな、がははは。俺様は十ラウンドでもオッケーなのに、いっつも女の方がダウンするんで手加減してたんだけど、こいつとなら手加減しないでもいいかも知れない)
 押さえ込んでいる男を振り放そうと暴れるリッカに馬乗りになりながらそんなことを考える。
しかし、これでは服を着せてやれない。
「離せ、離せというのにっ」
「ちょっと静かにしないか。せっかく服を持ってきてやったんだぞ。それとも裸がすきなのか、すけべだなぁ」
「なにぃ」
 少しだけ抵抗がゆるくなる。視線がソードの手の中にあるシャツにいく。
「ほら、ここにシャツがある。着せてやりたいのだが、そう暴れられると着せられない」
「貸せっ そして上から降りろ」
「何故だ?」
「・・・自分で着る」
 自分の格好を改めて認識し、気恥ずかしくなったのだろうか。そっぽを向いてつぶやいた。
「ちっちっちっ、俺様が着せてやるといってるんだ、遠慮しなくていいぞ」
「服くらい自分で着れる」
「まあまあ」
 ニヤニヤしながらそれでも服を着せようとするソード。
(いっつも脱がしてばっかりだからな、たまには着せるのも楽しい。何より建設的行動といえるって、あれ?)
「イテッ」
 服を着せるためにそれまで押さえ込んでいた手を離した次の瞬間。
平手が飛んできて、油断百パーセントのにやけた顔に命中する。
「他人をコケにするのもいい加減にし・・・」
 ばしばし
 口を開きかけたリッカの顔面にソードのパンチ。パー出ではなく、もちろんグーだ。鼻血で顔が真っ赤になる。
「きゃああっ!」
「他人の好意は喜んで受けろ。それと、俺様を攻撃するときはそれなりの覚悟をしとけ」
 びよよーん
 ほっぺたをつねり、横に引っ張る。
「ふん、今回はこれで許してやる。次はこんなに優しくしないからな」
「・・・!」
「全く、せっかく服を着せてやるってのに、興ざめな奴だぜ。ほらっ、さっさと着ろよ」
 顔を殴られ、少しひるんだリッカにシャツを投げる。そして、ソードは立ち上がってこれからどうしようか考え始めた。
なんか、せっかく気持ちよくなってハッピーだったのが、しぼんでしまった。リッカは服を着ようともせず、ソードを睨んでいる。
(具合はいいけれど、こんなに反抗的じゃーな。怒った顔も可愛いが、ずっと睨まれるのも不愉快だし、・・・俺様的に不合格だ。さーて、セカンドソードも満足したし、これからどうしようかな?)
 セックスが終わったあとの倦怠感も、さっきのいざこざで消えた。
(ここでだいぶ時間経っちゃったからなー。今何時だろう? 12時くらいだろうか。ってことは、朝まで走ればミヤの町にはたどり着けるか?)
 リッカが服を着だした。鎧の下につける下着は、フィットシャツといって体により密着するように設計してある。
それゆえ、着るのも脱ぐのも結構面倒くさい。
(戦争がどうなったかもさっぱり分からん。だいたいバルタンもエルマもどこにもいないのがおかしい。とにかく、どこかでちゃんとした情報を仕入れないといけない)
 どうやら服を着終わったようだ。上はぴっちりした服を着て、下には何にも来ていない。
うーん、実にエッチだ。ここに捨てるのはもったいない気がしてきた。
(いい。いいぞー、実にいい。これっきりにするのがもったいなくなってきた。といって、俺様の側に置くにはちょっと調子に乗っているからなー。 どうしようかなー?)
 眼が合う。すかさず睨んでくる。そのとき、いい考えが閃いた。
(よし! 捕虜だ、捕虜にしよう! そして、スピアー内の俺様専用牢屋に監禁して、やりたくなったときにやれるようにするのだ)
 すばらしい考えだ。さすがは天才の俺様、と自画自賛だ。
「きーめたっ おい、リッカちゃん」
 びくりと体が震える。また襲われるとでも思ったのだろうか?
「今から出発するぞ。行く先は・・・」
(待てよ、正直に言ったらきっと暴れるだろうな。そうなったら面倒くさいぞ。何とかしてだまさないと・・・よし、これで行こう)
 ほんの少し考えてからソードは続けた。
「あっちだ」
 ミヤの町の方向を指差す。
「どうやらこの戦闘はバルタンが押しているらしい。いろいろな情報を総合的に判断した結果、俺様スーパーコンーピュータはそういっている。ということは、バルタンはエルマ国側に侵攻しているはずだ。つまり、あっち」
 もちろん適当だ。そう、エルマが負けるはずがない。きっと、今頃はタンゲルブルクに向かって、敗走するバルタンを追撃しているに違いない。
「ということは、リッカちゃんの仲間も、バルタン軍もあっちにいることになる。俺様はたまたまミヤに用事があるから、たまたまあっちにいく途中だ。というわけで、送ってほしければ送ってやろう。どうする?」

 リッカ・フラウアーは警戒していた。このソードとか言う少年、いや、少年ではない、ただのならず者だ。
(私を送ってやるだと? 馬鹿な、そんな行為をするはずがない、絶対に何かいやらしいことを考えているんだ)
 大正解だ。
(でも、ミヤ方面に行くって事は嘘じゃないだろう。さしずめミヤかそこらで自分を監禁して犯す気か、それとも娼婦にでもして売り飛ばす気か・・・?)
 ほぼ正解。
(しかし、この戦争でバルタンが押していたのは事実だ。それは周りを見れば一目瞭然)
 まだそれなりに明るい時間帯に確認したことだが、倒れているのはほとんどがエルマ兵のものだった。
死んでいるエルマ兵とバルタン兵の比率は六対一くらいだったろうか? とにかく、自分たちが戦闘で敵を圧倒したのは間違いない。
(すると、ミヤに行ったほうが味方と出会うチャンスが増えるわけか)
 この戦場にいても味方は帰ってくるまい。
一度戦争を始めたら、敵の心臓を食い破らない限り自国に帰還しないのがバルタン流である。
と、ならず者=ソードが再び口を開いた。
「おい、どうするんだ? 置いていって欲しいならそうしてやる。最も、命の保障はしないぞ」
「命の保障だと?」
「ふん、あの鳴き声が聞こえないのか?」
 鳴き声だと? ソードの視線の方向に耳を澄ませば、
 キィィィィィン
(あれは、ラットパンサーか? こんなに早くやってきたのか!)
「気付いたか? ちなみに、かなり近いぞ。そうだな、ここから500メートルも離れていない。 数は、そうだな、40くらいだ。 明らかにこっちへ近づいてるぜ」
 確かに、さっきよりも鳴き声がはっきりしてきたようだ。
ラットパンサー。死体よりも弱った動物の肉を好み、集団で一匹をむさぼる獣。
単独でもそれなりに凶暴で強い生命体の癖に、徒党を組むため手に負えない。人間だろうと容赦はしない生き物だ。
隊商などがたいした武器も持たずに、ラットパンサーの中集団、十匹程度の集団に遭遇しようものなら、確実に全滅の憂き目に会う。
「まさか、こっちにくるとでも言うのか?」
「あいつらは死体より、生きてる肉の方が好きなんだ。俺様とリッカちゃんの動きを感じているのかもしれない」
「バカな、何でよりによって」
「事実は事実。さーてどうする? ここに残るか?」
「ぐっ」
(そうだ、ミヤに行ったほうがいい。ここに残ってもいいことなどないではないか。あのならず者の世話になるのは血反吐が出るが・・・選択の余地はないな。・・・それによく考えてみれば、もしもミを味方が占領していたらどうだ? そうだ、そうしたら立場が逆転するではないか! 町に入ったとたん、そこにはバルタン軍がひしめいていて、あの外道が捕られるということも十分ありえるんだ)
 そうなれば言うことはない。ここはひとまず自分が折れるしかないか。
「・・・送ってくれ」
「あぁん?」
「送ってくれといっている」
「馬鹿かお前は。送ってもらうなら、頼み方ってものがあるだろう?」
(この外道、どうせ『ソード様私を送ってくださいお願いします』とでもいわせるつもりなんだろう)
 予想していたことではあるが、口にしたくもない。しかし、背に腹は代えられない。
「ソード様、私を送ってくださいお願いします・・・いまにみてろよ」
 どうせ声が小さいだとか文句を言うのはわかっているのだ、リッカは大声で捨て鉢に言った。
これくらい大きな声なら文句はないだろう? ただ、最後だけは小さな声で。
「おう、送ってやろう。感謝しろよ」
 ソードはふんぞり返って満足げだ。鼻息が荒い。まったく、この男は単純だ。
「ならいくか」
 ソードが手を伸ばしてきた。仕方なく手を出すリッカ。そのまま引き上げて、抱きかかえる。俗に言う『お姫様抱っこ』の姿勢。
「ちょっ、どこを触っている!」
「んー? リッカちゃんのラブリイなところだけど?」
「さわるな、んう、やめてくれっ」
「やめるって、何を?」
(こ、この男は歩きながらずっと触り続ける気か?)
 ソードは鼻歌を歌いながら、何食わぬ顔だ。ただ、手だけはリッカの股間でワキワキと動いている。
(・・・もう、好きにしてくれ・・・)
 さっきからこんなのばっかりだ。もう疲れてしまった。抵抗するのも馬鹿らしくなって、リッカは眼をつぶった。
「なんだ、キスでもして欲しいのか?」
「・・・」
「なんだかんだいって、結構気持ちいいんだろう? 服を着てても分かるぞ、リッカちゃんのおっぱいはびんびんだ。それに結構濡れ濡れだしな、このすけべ、すけべちゃん」
(こ、このくそ馬鹿がっ 見てろよ、どうせエルマは私たちに負けるんだ。そうなったら、絶対酷い目にあわせてやるからな!)
 リッカがノーリアクションなのに付込んで、ソードは好きなことを言っている。
自分の嘘で、うまくリッカをだませたと思っているのだ。上機嫌なのだ。
こうして、まったく異なった思いを胸にしながら、二人は戦場を後にするのだった。



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