魔王ケイブリス 第一章 『魔王大地に立つ』







 十四話 さよならソウル





 バウンド・ソウル隊は、順調に行軍を続けていた。
 敵背後を大回りし、魔法部隊を中心に楕円を描くように進む。
 相変わらずポンポンと魔法が飛んでは来るが、避けるコツを掴んだバウンドが、ほぼ完璧にかわしてゆく。
 もっとも被害ゼロなんてのはありえないわけで、当初1500強いた人数は、1300程度に減少していた。
「ソウルの言った通りだな。確かに普通のモンスターはいないよ」
「ほらぁ、だから言ったじゃん? きっとさぁ、リック将軍達が頑張ってるんだよ」
「・・・そうだな。みんな、自分の役目を果たしてんだろ。この分だと、お頭も魔人を倒してくれたかな?」
「わっ、アイツらまた光りだしたよ、魔法が来るよっ」
 ソウルが魔法の気配を感じ、バウンドに報告した。
「よしきたっ。おいお前ら、一気に距離をとるぞ! 全速前進、敵から離れろっ」
「「おお〜〜」」
 バウンド達は、敵に背中を見せて走り出した。走り出してから十秒後、
 ドゴウッ
 魔法が空中を飛んでくる音。
「へっ、当たるもんかよ! 手前ら学習能力ないだろっ」
 ちらと振り返ったバウンドには、勢いの足りない魔法の群れが映った。
 このまま走り続ければ、一つも自分達に当たらないだろう。
「へへっ、どんなもんだい、なぁソウル! ・・・ソウル?」
 バウンドの隣を走るソウル。
 さっきまでなら、『凄いよアニキィ〜』みたいなリアクションが帰ってきたのに、何にも言ってくれない。
「? ソウルみただろ、兄ちゃんの――」
「ア、 アニキ、あれって・・・!」
「ん、どうした・・・な、何だアレ?」
 ソウルの視線を追うと、バウンドにも異様なものが目に入った。
 魔法兵から走って逃げる二人の正面、なにやら真っ黒な煙が沸いている。
 もくもくと蠢き、まるで生きているかのように形を変える。
 ドゴーン
 背後で魔法が爆発し、部下達から歓声があがった。
「けっ、てめぇらの魔法なんてあたるかよ!」
「でかけりゃいいってもんじゃねぇ。ちゃんと狙って撃って来いつーのっ」
「お頭に見切られてんだよ、バーカ! ねぇお頭――お頭?」
 走りながら、バウンドは黒い煙をジッとみていた。部下の言葉は耳に入らない。
「煙・・・か? いや、煙じゃないな・・・」
 煙はもっと薄い色をしている。
 それに、上空へ向かって伸びてゆく。第一、雨が降る中で煙が出来るはずが無い。
 火のないところに煙は立たず、だ。
 正面の黒い塊は、ひたすら黒く、横に広がったり縦に広がったりしがなら巨大化しているように見える。
 バウンドの意識は『魔法をひきつける行軍』から『目の前の黒雲』へ向けられていた。
 敵の魔法をかわした以上、走り続ける必要はない。
 けれど、黒雲にむかって走り続ける。次第に雲が近づいてくる。
「アニキ、下のほうに何かいるっ」
「何だって?」
 ソウルが鋭く叫び、バウンドも黒雲の下に目を凝らした。
 ・・・いる。確かに何か――巨大な生物が見える。
 バウンドはソウルほど目がよくないので、はっきり生物と断定はできないが、動いているようだし、おそらく生物だろう。
「・・・生物だよ、手がたくさんあって・・・。ねぇ、もしかしたらアレが例の魔人じゃない?」
「確かに・・・凄いプレッシャーを感じるな・・・」
 黒雲をみているだけで、バウンドの心が寒くなる。
 いままでに幾多の修羅場を経てきたバウンドだが、こんな感触は初めてだ。
 ソウルも不吉なものを感じているようで、声が微妙に震えている。思い詰めたような、そんな声だ。
「あたし、あそこにランス兄ぃがいるような気がする。ランス兄ぃが呼んでる気がする・・・」
「ソウル?」
「黒い煙の手前にはモンスターがいるみたいだけど・・・エッ、嘘ッ」
「ど、どうした、何が見えるんだっ?」
 突如飛び出したソウルの悲鳴、慌てるバウンド。
 先程まで目を細めていたソウルはパチッと瞳を見開き、呆然とした表情だった。
「嘘、嘘だ、嘘よ――」
「どうした、兄ちゃんに解る様にいえっ!」
「あ、あれは、あれ――」
   
   最初は真っ黒な雲しか見えなかった。
   近づくにつれて、雲の下に何かいるのがわかった。
   それは生物だった。
   何本も腕のある生物だった。
   何かを摘んでいるような・・・?
   一本の腕が、何かを摘んでいる。
   あれは・・・人間?
   どこかでみたことがあるような・・・?
   あの体つき・・・自分はしょっちゅう見ていたような・・・?
  
「ランス兄ぃ・・・?」
 ソウルの目はしっかりとランスを捉えた。
 距離があるため、凡人ではランスの同定どころかランスの存在すら見えなかっただろう。
 けれど、ソウルには解る。何度も自分を抱いた腕、おっきくて暖かくて、憧れだった肩と背中・・・ランスだ!
「お、お頭だとっ? ソウル、お頭がどうしたんだっ!」
 バウンドが激しくソウルに詰め寄る。唖然としたソウルから、喘ぐようにして言葉が紡がれる。
「ラ、ランス兄ぃが、掴まれてて・・・手とか、ダラーンて・・・全然動かない・・・」
「なんだってぇ?」
「ひ、酷い、酷いよ・・・。駄目だよ、駄目・・・っ」
 巨大な生物――魔王ケイブリス――との距離がどんどん縮まる。と、バウンドにも見えた。
 ケイブリスの一本の腕からぶら下がっている人間の影が――。
「おいソウル、あれか? アレがお頭なのかっ?」
 視界に入った人影を指差す。
 バウンドには、ランスかどうかまでは解らないが、ランスと身長は同じくらいに見える。
「あの・・・ぶら下がってるのがお頭なのかよ!」
「・・・」
 ソウルがコクリと頷いた。
 唖然とした表情は抜け、何かを決意した表情で頷く。ソウルの速度がクンと上がる。
「ちょっ、ソウル、どうするつもりだよっ」
 バウンドも慌てて速度をあげた。二人に釣られるように、部下達もいっそう速く駆け出す。
 そんな中、ランスを見つめたままでソウルは叫んだ。
「決まってるじゃないか! ランス兄ぃを助けるんだよっ!」
「た、助けるって――」
「じゃ、じゃあアニキはいいの? ランス兄ぃが死んじゃうよっ!」
「け、けど――この人数だぞ、モンスターだっているんだ、俺達まで殺されちまう――」
 バウンドはソウルの肩を掴んだ。ソウルは走るのを止め、じっとバウンドの目を見ている。
「か、数が違いすぎる! それに、お頭の部隊でも勝てなかったのに、俺達じゃ勝てるわけ――」
 パンッ
「っ」
 バウンドの頬に、ソウルの平手が飛んでいた。
 キュッと唇をかみ締め、涙を浮かべたソウルがいた。
「・・・だ、だからアニキは駄目なんじゃないか!
 やる前から駄目だとか・・・ランス兄ぃはそんなこといわない!」
「ソ、ソウル・・・」
「だから盗賊しか出来ないんだよっ。ランス兄ぃみたいに、凄い人になれないんだよっ」
「・・・」
「ランス兄ぃなら・・・いまだって絶対助けに行くよ。アニキと立場が逆だったら、絶対アニキを助けに行く!
 だからあたしもそうするんだっ!」
 何も言い返せないバウンドを尻目に、ソウルは部下を振り返った。
「ソウル隊いい? あたし達は正面のモンスターに突っ込むよっ!
 おっきな生き物の所まで、一気に駆け抜ける!」
 いままでバウンド隊と一緒に行動していたソウル隊が、分かれてソウルのところに集結する。
「スピードで勝負なんだからね、絶対立ち止まらないこと! よしっ、いくよ!」
「ちょっ、まてソウル――」
 ダダダダダッ
 伸ばしたバウンドの手は、ソウルの肩に届かなかった。バウンドを残し、一人駆け出す妹の姿。
「くっ・・・馬鹿野郎、俺の気持ちも知らないで――」
 喉まで出かかった言葉を飲み込み、バウンドも部下に向き直った。
「お、お前らいいか! 俺達もソウルに続け! モンスターに構うな、とにかく敵を突き抜けるぞっ。進めぇっ!」
 半ばヤケクソに叫ぶと、自ら先頭にたって、バウンドは駆け出した。部下達もどうやらついてくる。
「ソウル、お前は、お前だけは死んじゃいけねぇんだよっ・・・」
 バウンド・レスの、偽らざる本心だった。





「邪魔だ邪魔だっ」
「あらよっと! そんなのろっちい棍棒が当たるかよっ」
「へへへっ、残念でした〜、そらっ」
 ソウル隊の面々は、魔物の壁と奮戦していた。
 奮戦とはいっても、正面から戦うのでなく、ただ敵攻撃を受け流しつつ前進していた。
 攻撃をかわし、得意になった声がする。けれど、簡単に避けられる攻撃ばかりではない。
「ぐおぁっ」
「わぁぁぁっ」
「だ、大丈夫かマサトォ! わ、わぎゃぁ!」
 つぎつぎと倒れてゆく部下達。ソウルも他を省みる余裕はない。
 低い姿勢で、次々迫る攻撃をすり抜ける。
 そうして、ソウルを含めた十数人は、見事に敵陣をとっぱした。
「やったっ・・・っ!」
 急に見晴らしがよくなり、ソウルはキッと見回した。
 いた。巨大な生物――ケイブリス――が。
 じっと足元をみているので、ソウルに気付いてはいないようだ。けれど、肝心のランスの姿がない。
「ランス兄ぃはっ?」
 必死に周囲を探すソウル。と、ふっと違和感が走った。
 たしかケイブリスの頭上には、黒い塊があったはずなのに、ない。
「あ、あそこ?」
 代わりにに、平野の一点がでたらめに黒い。
 ケイブリスの足元、ケイブリスの視線の先に、黒い塊が落ちてゆく。
 落ちて行く先には――人が倒れている――ランス!
「兄ぃっっ!」
 ランスを認めた瞬間、ソウルは猛然と走り出していた。
 ソウルに映ったランスの姿は、
 かつてソウルが――いや、シィルですら――見たことがないほど、打ちのめされていた。
 ソウルの知っているランスは、
 『がははは、なかなかグッドだぞ!』
 『いいか、てめぇら突撃だっ』
 『ソウル、ソウルはどこだぁっ』
 『がははは! 助けてやったぞ、死ぬまで感謝しろ』
 『俺様は無敵だぁっ』
 そんなランスの筈なのに――。
 ソウルとランスの間を阻むものは何もない。
 目の前で、黒い塊がどんどんランスに近づいてゆく。
 黒い塊から立ち昇るおぞましい気配、全てを飲み込む黒い色。
「ひ、ひぃぃぃっ!」
「怖えぇ、怖えぇよぉっ」
 部下達がつぎつぎに地面に突っ伏す。
 既に、立っているのはソウルだけ。走っているのもソウルだけ。
 けれど、ソウルは止まらない。今自分にしかできないこと、それがランスを助けること。
 ランスはソウルを助けてくれた、ソウルにたくさんの幸せをくれた、だから自分もランスを助ける――。
 走り続けるソウルの背後に、もう一つ人影が現れる。バウンド・レス。
 そして、ソウルを追い駆けるように、バウンドも地面を蹴った。
 立ち込める冷気に負けず、妹に負けない速度で走り出していた。
 バウンドの前を走るソウルは、はっきりと見た。
 黒い塊がランスを包み、その瞬間、ランスの体がビクリと跳ねたのだ。
 ランスは、ランス兄ぃはまだ生きている!
 猛烈な寒気に負けず、ソウルは走り続けた。
 とにかく、ランスは生きている、まだ死んではいないんだ。
 すでにランスまで二十メートルもない。つまり・・・魔王まで二十メートルの位置にソウルはいた。
 けれど、魔王ケイブリスなどソウルの目には入っていない。ただ茶髪の青年だけしか見ていなかった。




――――――
 ランスは、ただ横になっていた。
 全身の感覚が殆どない。腕の感覚がない、足の感覚がない、ただ寒い。かろうじて目を開ける。
 ・・・なにか黒々としたものが迫ってくる。消えそうになる意識を振り絞り、ランスは魔王を見つめていた。
 その瞳には、さっきまで燃え盛っていた炎は・・・見出すことができなかった。

――畜生、なんで俺様がこんな目にあってるんだ・・・?
  魔王ってのは、こんなに強いモンなのか?
  ずるいぞ、反則だ・・・。
  俺様が全力でこのザマなんて・・・へっ、最悪だぜ。
  ・・・駄目だ、もう何も出来ねぇ。駄目だ・・・
 
 そして、薄い笑みを浮かべると、ランスの瞼は下りていった。
――みんな・・・俺様はもう駄目だ・・・。
  頑張ったけど・・・駄目だった・・・。
  へへ・・・ごめんな・・・嘘をつくつもりじゃなかった・・・けど、お前を騙しちまったな・・・。
  ・・・お前だけは・・・守るつもりだったのに・・・へへ・・・さ、さよならだ・・・。

 目の前に迫った黒い塊がランスの体を包み込んだのは、朦朧とした意識が消えようとする瞬間だった。
 薄く笑っていたランスの顔が、急激に歪む。
 消えようとする意識の中に、魔物が、血が、ドロドロに溶けた溶岩が!
 針が、長い針太い針短い針が、ランスの意識を貫いてゆく。
 既に感覚を失った筈なのに、せっかく痛みから解放されると思ったのに。
 溶岩がランスの足を溶かす。ランスを引きずり込んでくる。口から、鼻から、耳から体内に侵入する。
 ギュッと瞑った目をこじ開けて、涙腺を通って脳まで溶かす。
 溶けた筈の体が変な方向へ曲がり、骨がばらばらに砕け、肉を破って飛び出してくる。
 ありえない感覚、ありえない痛み――でも、すべての感覚が――リアルだった。
――――――







 ケイブリスもソウルに気付いていなかった。
 ケイブリスも、足元に転がる虫けらにしか興味はなかった。
 自分のプレゼントが虫けらに気に入って貰えたかどうか?
 冷笑を浮かべながら、そこだけに注意を向けていた。
 ビクリと動いたランス、すでに悲鳴すらあげないけれど、苦しんでいるのはよく解る。
「虫けらが・・・いい顔だぜぇ? ぐぅえへへへ・・・」
 ケイブリスは呟いた。ランスの苦悶の表情・・・実に笑える。
 面白くておかしくて楽しくて・・・ケイブリスは空に向かって爆笑した。
「ぐぅわっはははははぁ! 手前にはもったいないプレゼントだったかぁ?
 があっはははははぁ! なぁクソ虫、返事くら・・・いぃぃぃ?」

 しかし! 

 ひとしきり笑って、もう一度足元に目をやると・・・ランスがいない? 
「ぐぇっ、え、え? あれ、あれぇ?」
 そんな馬鹿な話はない。アレだけ念入りに体を壊された人間が、いまさら動けるはずがないのだ。
「あれぇ・・・? おぉあ、なんだアリャ?」
 少しはなれた場所を、南に向かって走る影。誰かを負ぶっているように見える
「んん?」
 目を凝らすケイブリス。
 と、負ぶわれているのはランスではないか。誰かがランスを助けにきたのか?
 そんなことはどうでもいい。とにかく、
「お、俺様の玩具を持ってくたぁ、いい度胸してるじゃねぇかよぉ・・・。誰だかしらねぇが、死にたいらしぃな?」
 自分に逆らう存在は許さない。ランスを助けようとする存在など、生かす理由はない。
 パァァァァ
 一本の腕に魔力を集め、
「・・・ッ ???」
 無言でソウルに放とうとした、その時だった。
 ケイブリスの体に訪れる感覚。魔王に覚醒して以来、久しくなかった感覚、痛みが? 
 ケイブリスの八本の生殖器の内、一本に何かが刺さったような? 
「??? え、お、えぇ?」
 ゆっくり、ゆっくりと己の下半身に目を移す。
 そこには・・・体液を溢れさせている己の生殖器が・・・!
「このっ、この、このぉっ!」
 一人の人間が、しきりに剣を振るっている。
 ひとしきり斬りつけると、男――バウンド・レスは飛びずさった。
 その手には、先刻までランスの手にあった漆黒の剣――魔剣カオスがあった。

――――――
 ソウルを追い駆けるバウンドに、視界の端で何かが光った。
 地面に突き刺さり、黒々とした輝きを放つ剣がそこに。いつでもランスの腰にあった剣、魔剣カオスだ。
 魔人を斬ることの出来る、類稀な剣。
「・・・っ」
 バウンドにカオスが扱えるかどうか・・・そんなことはわからない。
 けれど、気がついたときにはカオスを握り、ケイブリスに突っ込んでゆくバウンドがいた。
――――――

「へへへ・・・き、斬れた、俺にも斬れた・・・」
 ケイブリスがソウルに魔法を向けたとき、バウンドは無我夢中で飛び込んだのだ。
 このままではソウルが、自分の妹がやられる――そう思ったとき、バウンドの恐怖心が吹き飛ぶ。
 目の前には、切れ目がはいった触手が一本。ジワジワと白い液体が。
「へ、へへ・・・」
『魔人を殺したい』、バウンドがそう願った瞬間だった。
 カオスの黒い思念が渦を為し、バウンドの頭に入り込む。『魔人を、魔王を殺せ』と囁きかける。
 バウンドの顔が再びケイブリスに向けられ、頭の中が魔人色に染まる。自分本来の意識が遠のいてゆく。
自分は、自分はどうしてカオスを握っているのだろう――?
「わぁぁぁぁっ」
 ピピピピッ
「あぁ?」
 カオスの思念に操られるようにしてケイブリスに飛び掛ったバウンド。
 けれど、待ち受けていたのは、四本の火線だった。寸分違わぬ正確さで、バウンドの手足の付け根を焼き払う。
 カオスを握った右手、拳を握り締めた左手、自慢の俊足達が――炎に包まれて崩れてゆく。
「っくあああぁ!」
 体を燃やされる激痛に、バウンドが悲鳴を叫びあげる。そこに、ケイブリスの震える声が。
「き、き、きききっさまぁ、お、俺様のスーパーグレートち○ちんをぉぉぉ」
 ガシッ
 地面で悶えるバウンドを乱暴に掴みあげる。
「お、俺様のち○ちんだぞ? ま、魔王様のち○ちんに・・・傷、傷傷傷・・・」
 グアッ
「う、うわぁあぁ!」
 爪が深々と突き刺さり、バウンドの下半身は握り潰された。
 ただの肉塊になったバウンドの腰に爪をかけると、
「この、く、くぉぉのクソ虫がぁぁ!」
 ビュッ
 一際大きな怒声とともに、バウンドを天空に放り投げる。
 シュウウウウウ
 ケイブリスの体全体が白く光り、魔力が一気に高まってゆく。
「・・・」
 上空へ飛ばされるバウンド。凄まじい速度が、バウンドの意識を奪ってゆく。
「・・・逃げろ・・・よ・・・」
 一言。たった一言だけ。
 ゴオオオオォォォォォ
 ケイブリスの六本の腕が空を向き、真っ白な魔法球が放たれる。そして――辺りが真っ白な光に包まる。
 こうして、バウンドもまた戦場に散った。
 光が消えた後の地上には、己の『スーパーグレートちん○ん』をさするケイブリスと、
 ケイブリスを取り巻く魔物だけが立っていた。





 ・・・あとがき・・・
 十四話です。
 ケイブリス、相変わらずやりたい放題です。
 バウンドをもう少し格好よく書きたかったのですが、うまくいきませんでした。
 死にまくりの戦闘シーンですが、もう少しだけつづきます。







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