魔王ケイブリス 第一章 『魔王大地に立つ』







 十八話 混乱、そして二種類の道




―――スードリ平原の戦いから二日後、午後―――
「早く担架を回して!」
「急げっ、将軍が先よっ」
「そこをどきなさい!」
 リーザス城門を抜け、天才病院へと続く坂道。白衣の看護婦が見守る中、いくつもの担架が登ってゆく。
「もうすぐ、もうすぐだからっ・・・!」
 戦闘をゆく担架を持つのは四人、全員が金色の鎧を纏いった若い女性である。
 なかでも正面の女性が一際美しい。
 けれど、本来整っているだろう顔立ちではあるが、今の表情は必死の形相でしかなかった。
 担架に横たわっているのは、金髪の青年。
 すでに意識を失っているのか、担架の振動に合わせて身体を上下させている。
 真っ白なシャツに着替えているものの、あちこちからじわりと赤が滲み出す。
「リック! リックしっかりしなさい!」
 先程の女性・・・レイラ・グレクニーが呼びかけても、もはやリックは反応しない。いや、出来ない。
 微かな呼吸が口から漏れるけれど、いまにも途絶えてしまいそうだ。
 レイラにとって、彼女の目に映る光景はいまだ現実と思えない。
 リーザス最強剣士、リック・アディスンの凄まじさは誰よりも彼女がしっている。
 そのリックがここまで痛めつけられるなど、かつてあった例が無いし、これからもありえない筈だった。


――――――
 パイアールの侵攻、サイゼルの侵攻、そういった魔人の攻撃に備え、レイラは国境警備に出向いていた。
 ゼスとの国境、リッチの町。
 ここならば魔人がヘルマン山脈を越えてきても、シャングリラ砂漠を越えてきても柔軟に対応できる。
 三日間、魔人侵攻の気配はなかった。どうやら、ゼス方面とヘルマン方面を集中攻撃するらしい。
 これまでは各魔人がバラバラに攻めてきていたのに、『厄介だわ』をレイラは思った。
 何事もなく四日目が過ぎたと思った矢先だった。
 深夜、宿舎で眠るレイラのもとにやってきた忍者、かなみ。
 表情を消したようにして、戦闘の有様、事態の展望を語る。
 ・・・平たく言えば、『ランス敗北、これから魔人が攻めてくるだろう』・・・と。
 驚愕のレイラ。けれど、衝撃はこれだけではなかった。かなみの口から語られる『赤の軍壊滅』の言葉。
 かなみがレイラの宿舎を出た数分後、リーザス親衛隊も動き出した。
 目的は戦場離脱者を救出し、より詳しい情報を手に入れること。
 深夜に関わらず篝火を焚き、レイラはヘルマン山脈をのぼり始めた。
――――――


 タタタタッ
 病院内の、真っ白な廊下を駆ける。主任医師、アーヤ・藤ノ宮がおっとりと手を振っている。
 どうやらあの部屋が集中治療室か――?
 一刻もはやくリックを手当てしなければ、焦る気持ちが足に来る。
「くっ!」
 足がもつれて転びそうになるのを、ぐっと耐える。リックの担架を持つ人間は、レイラを含めて四人。
 レイラ以外の三人は途中何度か交代したが、レイラだけは一貫して担架を支え続けている。
 足が、足がいうことをきかない。けれど、自分が交代するつもりは無い。
 現に、いまだ四人の中ではレイラの足が一番速い――。


――――――
 ヘルマン山脈を越えては見たものの、さしあたってどうするべきか解らない。
 スードリ平原からリーザスへ向かうなら、ポーン、コサックを通ってくると考え、レイラはコサックへと進んだ。
 そうしてどれ位進んだだろう?
 辺りが明るくなり、朝日が昇ろうとした時だった。リーザス軍人の一団が現れたのは。
 見慣れた赤い鎧ではなく、見慣れた鉄のメットでもなかった。
 かなみとメナドに支えられ、引きずられるように歩く金髪の青年。
 レイラ以外の親衛隊は、誰も気付かない。
 この青年が泣く子も黙る『リーザスの赤い死神』、リック・アディスンであることに。
 駆け寄るレイラ、弱弱しく微笑むリック。
 『だ、大丈夫・・・です』
 そう呟くと、それきりリックは崩れ落ちていた。
 レイラは親衛隊を二つに分けた。
 五十人程を別にし、リック、メナド達十数名をリーザスに運ぶ帰還係。
 残りの750名は引き続き壊走兵の収容に当たる係。
 レイラ自身は帰還係の指揮をとり、自らリックの担架を担ってリーザスまで走り続けた。
――――――


「は〜い、ご苦労様です〜。それでは〜このベットに寝かせてください〜」
 治療室の扉をくぐると、既に準備を整えたアーヤが待機していた。
 言われるままに、リックをベットに横たえる。
「では〜、皆さんは出ていて貰えますか〜? 少々血が飛ぶかもしれません〜」
 傷口を見た時点で、アーヤはリックの症状を理解していた。
 肩口にパックリと開いた傷、この中にモンスターの爪が埋まっている。
 また、腹部の引掻き傷が化膿しており、ここも切開が必要だ。
 血も相当に流れ出ていて、まさしく死の渕を彷徨っている。
「こ、ここにいては――」
 『リックの治療を見届けたい』、そういおうとしたレイラを制し、
「駄目です〜。病院では医師の指示に従ってください〜」
「で、でもっ」
「気が散るし、不潔です〜。リック将軍を助けたいなら、言うとおりにしてください〜」
 そういわれては、もはやレイラのでる幕はない。レイラはじっとアーヤを見つめ、
「・・・お願いします」
 一言だけいうと、治療室を後にした。
 廊下に出たとたん、レイラは床に膝をついた。
 なんだか昨日の事が夢のようで、いまだに現実だと確信がもてない。けれど、この足の震えはまぎれない事実。
 『大丈夫です』
 ヘルマンで再会した時、確かにリックはそういったのだ。
 メットをとった、例の気弱な表情で、レイラにゆっくり微笑んだのに、
「・・・ど、どこが大丈夫なのよっ・・・!」
 真実は、まるで反対だった。
 全然大丈夫ではなかった。
 これっぽっちも大丈夫でないではないか。
「・・・嘘つき・・・」
「た、隊長。もう休んでください、昨日から走り通しで」
 床にしゃがみ込んだレイラの側に、部下が駆け寄る。
「・・・」
「アーヤ先生は名医です。リック将軍だって、並大抵の身体じゃありません! きっと、すぐに元気になられます!」
「そうです、なんたって『赤い死神』なんですよ? それが亡くなられるはずありませんっ」
 何も言わないレイラを励ますように、つぎつぎ浮薄な言葉が吐かれる。
 そんな言葉は一つもいらないのに。そんな言葉に意味は無いのに。
「・・・」
 黙りこむレイラに肩を貸し、部下はレイラを床から立たせた。
「さ、レイラ将軍。お部屋までご案内しますから、どうぞお休みになってください」
「エクス将軍には、我々が報告しておきます」
「何かあればお部屋に窺いますから、ごゆっくり休まれてください・・・」
 口々に励ましを述べ、レイラを寝室に運ぼうとする。
「・・・」
 レイラは思う。
 確かにわたしは一日走り通しだった。足も、手も、頭も疲れている。
 そうだ、これは夢じゃないかしら?
 一晩眠って起きてみたら、なにもかも嘘だったりする?
 そうよ、これは悪い夢――リックやランス君がやられたなんて――悪い夢でしょ?
 虚ろな瞳のまま、部下に支えられるようにして、レイラは病院を後にした。
 レイラの後方で、『手術中』とかかれたボードが揺れていた。





―――同日、午前―――
 広間には、各地からの情報が溢れていた。
 親衛隊からは、『リック、メナド、メルフェイス以下十二名生還』の知らせが。
 加えてヘルマン諸都市からも、続々と伝令が入ってくる。
 曰く、『魔人軍、スードリ13を蹂躙』『ポーン破壊』『ポーンからマイクログラード方面へ進軍』。
 『我々はどうすればよいのですか?』『リーザス軍は何をしている!』『パットン王の行方はどうなった?』
 といった質問も溢れている。
 これだけでも膨大な報告だ。けれど、まだまだ報告は続く。
 次はゼスのバレスから来た伝令である。
 『ゼス軍と協力し一次、二次攻撃は止めたものの、劣勢。ランス王の救援求む』。
 ガンジーからも、『このままではゼスが滅びる。ランス、健太郎をよこしてくれ』。
 次々に広間に訪れ、各伝令が自分に託された口上を述べる。
 応対するのはエクスの役目、テキパキと情報を処理し、伝令に返答を持たせる。
「ヘルマンの皆さんは、徒に魔物を刺激しないで下さい。
 被害を最小に食い止めることを考え、事前に退避願います。
 いずれリーザスが魔物を撃退しますから、それまでの我慢です」
「パットン王は戦場を離脱、ヘルマン北方にて傷を癒しています。いずれ皆さんの前に現れます」
「ゼスには、当面援軍は送れません。
 先のヘルマンにてリーザスは敗北し、ランス王と健太郎殿はともに戦闘力を失っています。
 ゼス方面の魔物は今の兵力で食い止めてください」
 エクスの返事を受け取って、使者が次々と広間から去る。
 彼らの役目は、自分に託された情報・疑問をエクスに伝え、なにがしかの指示を仰ぐこと。
 厳しい顔つき、苛立った表情、殊更無表情を装った顔・・・さまざまな顔をして使者達が去ってゆく。
 共通しているのは・・・笑顔がないことだ。皆、笑わない。満足の雰囲気をかもさない。
 中にはあからさまにエクスを睨むものや、
 『気休めを言わずにさっさと魔物を倒せ』というニュアンスを示す者もいる。
 ある都市長などは、
「リーザスの腰が引けている。
 国内に攻め込まれ民衆が街が潰される様を前にして、救援の一つも寄越さないなどと、それでも武人か?
 もし撃退が叶わないなら、今まで納めた税金を返せ。それが嫌なら勝算云々以前に、いますぐ魔物と戦え」
 と、堂々といって寄越した。他の使者同様に、
「とにかくあと少し辛抱してください。リーザスで軍を再編成し、必ず魔物を追い返しますから」
 と宥めたエクスではあったけれど、広間を立ち去る使者の背中に、
 ふぅ〜
 大きな吐息を吐き出さざるを得なかった。使者達が不満なのはもっともだ。
 自国の都市すら守れない軍隊に価値は無い。彼らの怒りに反論できないだけに、辛い。
 けれど、エクスは思う。
 ・・・魔人と戦え?
 いったいどうやって戦えばいいんだ。
 パットンやランスはどうなったか?
 死んでいなければ最高ですよ。
 これからどうすればいいのか?
 ・・・私の方が聞きたいですね。
 一人で苦笑いだ。もう笑うしかない。
「本当のことを言うべきなんでしょうね・・・。ランス王を欠き、人類は魔人を倒す術をうしなった、と」
 自分にしか聞こえない小声を漏らす。けれど、それはできない。
 玉座の隣に弱々しく立ち尽くし、目を閉じて肩をすくめるエクス。
 脳裏には昨夜の会話が浮かんでいた。


――――――
「失礼します」
 それが第一声だった。
 エクスの部屋、話し合うのはマリスとエクス。前触れなく訪れたマリスは、有無を言わさず宣言した。
「魔物は数日でリーザスに侵攻するでしょう。
 ・・・現在、一日一都市の速度で進軍しています。
 現在彼らはポーンということは、ログBに到達するのは五日後。
 ヘルマン山脈を越えてリーザス領マウネスには六日後侵攻と予想されます」
 エクスも同感である。これまでの敵進軍速度は驚異的な速さで、リーザス軍のおよそ七倍の速さを保っていた。
「ヘルマンとゼスは切り捨てます」
 平然と、けれど物騒極まりない発言を放つマリス。
「彼らには徹底的に抗戦して貰います。
 安易に降伏されては、リーザスが降伏する重みが失せます」
 エクスの冷たい瞳。ゆっくりと手で眼鏡を直し、あらためて侍女を見やる。
「兵力を温存し、優位に降伏交渉を進めようとも思いました。
 しかし、すでに魔人側の優位は崩せません。
 ならば、人類侮りがたしという印象を与える方が得策でしょう」
 兵を捨て駒にする側から見れば『得策』かもしれない。
 けれど、負け戦に捨てられる方は堪らない。マリスが続ける。
「降伏はここリーザス城に魔物が迫った際に行いましょう。
 軍隊として温存するのは・・・そうですね、白の正副軍と、親衛隊。
 その他の部隊にはリーザス諸都市の防衛に当たってもらいます」
 エクスに口を挟ませない。淀みなく喋り続ける。
「人類が魔物に従う仕組みとして、魔人を頂点としたヒエラルキーを提案します。
 二段目に魔物、三段目にリーザス王家、四段目にヘルマン、ゼス、JAPAN。
 いうなれば、リーザスが魔物に代わって人類を統治する仕組みです」
 異論ならいくらでも挟めるけれど、エクスは黙って聞いていた。
「・・・この条件を魔人が飲めば、降伏しましょう。
 もはや、いまの私達に魔人と戦う力はありません。将軍も、この方針に賛同してくれますか?」
 丁寧な言い回しではある。けれど、マリスの目つきは『同意を求める』ものじゃない。
 いうなれば、確認。あるいは念押し。
 こうしてマリスと向き合っていると、エクスに巨大なプレッシャーがかかる。
 エクスにこれ程の圧迫を与える人間など、他にはリックとランスくらいだろう。
「・・・反対です」
 クイ、と眼鏡を直し、エクスは重い口を開いた。
「第一に、ゼスとヘルマンを捨て、
 リーザスだけが生き残る方針を選べば、人類の歴史が続く限りリーザス人が十字架をしょいます。
 人類同胞を敵に回す愚は犯すべきではありません」
 見つめあう二人。
「降伏するなら、直ちに、それも全面的に降伏するべきです。
 加えて、魔人が人間を支配する片棒は余りに重過ぎます。
 もっとも・・・私は全面降伏自体に反対ですよ?」
「・・・では、エクス将軍の意見を伺いましょうか」
 氷の女という表現、マリスのような女性に相応しい言葉だ、とエクスは思った。
「先程マリス殿は『ヒエラルキー』といいましたが、そんなものを魔人が受け入れる筈がありません。
 彼らにとって、人類全てが『奴隷』もしくは『食料』に過ぎないんですよ?
 そんな相手に降伏してどうします?」
「では、傷つけることすら出来ない敵に殺されろ、と?」
「そうではありません。確かに、現在我々に魔人と戦う術はない。
 ですが、将来なんらかの方法で戦えるという可能性・・・僅かですが、存在します」
「可能性はありません」
 慎重に言葉を選ぶエクスに、マリスはにべもなかった。
「ランス王、健太郎殿。魔人を斬ることの出来る二人はもういません。希望的観測はやめましょう」
「しかしっ・・・」
 冷然と言い放たれ、エクスは思わず声を荒げた。
「しかし魔物に屈服すれば、歴史を逆行することになります。私はリーザス軍責任者として――」
「おだまりなさい」
「なっ・・・?」
 ピシリ。反論の機会すら奪う一言が。
「エクス将軍は将軍である以前に、リーザス女王リア様の臣下です。
 ・・・今後の方針については、既にリア様の了解はとっていますから、これ以降の変更はありません」
「・・・」
「将軍には将軍の意見がおありでしょうが、もはや方針は決定しました。
 ランス王がいない今、リア様の決定は絶対です・・・お分かりですか?」
 マリスに気圧されるように、エクスは身を反らした。
「・・・お分かりですね?」
 念を押すマリス。既に事は話し合いのレベルを超え、命令へと形を変えていた。
「先程の条件、リーザスによる人類統治を蹴られた場合は・・・どうするのですか?」
 冷やかに見下ろしてくる視線と睨みあったのち、低く短く尋ね返す。
「その場合は――」
 クルリ。エクスに背を向け、マリスは部屋から出て行こうとした。去り際に一言、
「最もリア様のためになるよう、にです」
 パタン、コツコツコツ
 ヒールの足音高く、侍女マリスは去っていった。
――――――


「リーザスの方針では・・・貴方達は見捨てられたのです」
 ヘルマンやゼスの使者に対し、心の中で呟く。
 改めて考えると、リーザスの実権はマリスが握っている。
 エクスの方が位が高いとはいえ、マリスの決定=リアの決定の図式がある以上、マリスには逆らえない。
「・・・すべてはリア様のため、か」
 エクスなりにマリスの言葉を吟味した結果、エクスは一つの結論に達していた。
 即ち、マリスにとってリアを守ることだけが大事であり、それ以外はどうでもよいのだ。
 リーザスによる間接統治とは、所詮リアの立場を高める便法。
 後世リーザス人が批難の的になろうとも、そんなことはどうでもいい。
 自分達が人間を裏切って魔物の片棒を担ごうと、そんなことは構わない。
 いくら人間から恨まれようと、リアの確たる安全が保障されればそれでよいのだ。
「貴方のリア様への忠誠心、敬服に値しますよ・・・」
 一通り使者との面談を終え、広間に静けさが戻ってくる。
「けれど、私はリア様だけに忠誠を誓ったわけじゃない」
 クイ
 右手を顔に持ってゆき、そっと眼鏡を眉間に寄せる。
「私は・・・ランス王にも忠誠を誓っているのです」
 クルリと首を捩じり、誰もいない王座を見つめる。
 けれど、エクスにはみえるのだ。
 緑色の鎧を纏い、漆黒の剣を傍らに。収まりの悪い茶髪をなびかせ、倣岸に胸を張り上げる男が。
「ランス王、私はあなたの意志を尊重します。
 そして、王を信じようと思っています・・・シィルさんの足元にも及びませんが」
 

――――――
 エクスの脳裏には、先日見たシィルの笑顔が蘇っていた。
 彼女は――シィル・プラインは、最後までランスを信じるだろう。
 ランスの意思、もしくは遺志を守るだろう。そんなシィルをみて、自分がハッとしたことを思い出す。
 シィルの言葉、
 『ランス様を信じてください』
 その一言が、エクスの胸に小さな灯りを点した。
 本音をいえば、ランスの生還などありえないと思う。しかし・・・それでも信じる人がいる。
 ならば、自分だってランスを信じてよいのではないか?
 論理も常識も突き抜けてランスを信じる女性の姿が、エクスに開き直った感覚を覚えさせていた。
 ランスを失えば、どのみち自分達は魔人の奴隷になる。それならばいっそ、
 『ランスは帰ってくる。その日まで屈することなく戦おう』
 理屈を超越した発想。けれど、エクスは腹をくくっていた。
――――――


 知的な顔立ちが、悪戯っぽく笑っている。クスクスと笑い声でも聞こえてきそうな。
「・・・魔人に対抗する灯火だけは、絶やさず燃やし続けます。
 何時の日か・・・王が帰ってこられる日まで、ね・・・」
 ニヤリと唇を吊り上げたエクスだった。と、カランカランと鐘がなる。
 どうやら、また別の使いが訪れたらしい。エクスは普段の顔つきに戻ると、
「どうぞ、お入りください」
 玉座から扉へ向き直る。
 いったい今度はどこの使者だろう?
 ラング・バウからだろうか?
 ログBから?
 意外とウラジオストックだったりして――。
 扉が開き、金色の鎧を纏った少女が跪く。
「失礼します!
 リーザス親衛隊、ファイ・ラドクリムと申しますっ。ただいまヘルマンからリック将軍他十四名が帰還――」
 澄んだ声の報告。男の声ばかりで疲れたエクスの耳に、とても、とても新鮮に聞こえた。





 ・・・あとがき・・・
 十八話です。
 あと少しで、一章が終ります。
 うまく表現できたか自信がないのですが、マリスが降伏路線、エクスが抗戦路線に進もうとしています。(冬彦)









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