魔王ケイブリス 第三章 『逆襲のランス』






  四話 カスタムの夜





「かなみよ、あれがカスタムの火だ!」
 ビシッ
 自信満々で真っ暗な近代都市を指差すランスに向けられたのは、冷やかな視線と突っ込みだった。
「なにがカスタムの火よ。火どころか明かり一つついてないじゃない……ひゃっ」
 ポカッ
「せっかく俺様が雰囲気を和ませようとしてるんだぞ。いらんチャチャをいれるな、ふん」
 頭を抑えて屈みこむかなみを尻目にランスは都市に入っていく。
「ちょ、置いてかないでよぅー」
 慌ててトテトテと駆け寄るかなみ。なんだか走り方までシィルのようだ。
 ランスと一緒にいると皆こうなってしまうのだろうか?
 いや、重い荷物を背負わされて走れば誰でもこんな走り方になるのだろう。
「全くけしからん奴らだ。せっかく俺様が尋ねてやったのに礼儀がなってない。
 おーい、マリアー! 志津香―! 誰でもいいから出てこないか――」
 大声で呼ばわってみても、なんのリアクションも帰ってこない。シーン、静まり返ったカスタムの町。
「ラーンちゃーん、ミリ――……。 ……つまらん」
「誰もいないみたいね」
 ランス達が黙ってしまうと、物音一つ立たない街だ。
「でもおかしいわ。建物は全然無事だし、魔物も人間もいないってことは……」
「どっかへいったってことだな。ってことはアレか、マリア達はカスタムを捨てたんだな」
 誰もいない以上そう考えるのが妥当だろう。
 かなみはソッとランスを窺った。怒っているだろうか?
 思い通りにいかないときは八つ当たりする、これはランスの大きな特徴だ。
 かなみとしてはマリア達がカスタムから撤退したことを良しと思っている。
 その分ランスの行動が自由になるし、今は一刻も早くリア救出に出向きたいからだ。
 ランスにカスタムヘ留まって欲しくはない。
「あれ?」
 ランスは、かなみの予想に反して平然と街を睥睨していた。
 てっきり『けしからん、けしからんぞ〜』などダダを捏ねると思っていたのに。
「ん? 俺様の顔に何かついてるか?」
「え? あっ、ううん、なんでもない!」
 慌てて首をふるかなみ。
「そ、それよりお腹すかない? あたしはペコペコなんだけど」
「そういえば俺様も腹が減った。よし、取り合えずマリアの家にでもいくか」
 ランスにとってカスタムの街は、アイス・リーザスに次いで馴染み深い街だ。
 どこに誰の家があるかも全て把握している。ただでさえマリアの家は解り易い。
 リーザス城内のチューリップ研究所を小型にしたようなドームが町にドカーンとたっていて、それがマリアの家だ。
 しばらくテクテクあるき、かなみとランスはマリアの家に着いた。中に人がいる気配はなく、真っ暗で音すらしない。
 ランスが訪れるときは大抵『グイーン、ドカーン』とか『ピュルルルル〜』とか、
 いかにも『何か作ってます』ってな音で騒々しかった。静かなマリア家を意外そうに眺めるランス。
 スタスタ歩いて扉に触れると、当然だが鍵がかかっていた。
「かなみ、鍵を開けて来い」
「えっ? でも勝手に入っちゃ……」
「構わん、俺様が許す。俺様が来た時いない方が悪いんだ」
「……」
 かなみは首をすくめ、それ以上抗弁するのをやめた。
 マリアだってランスが来たら鍵を開けたことだろうし、黙って入っても怒ったりしないだろう。
「あれ? あれぇ?」
 鍵穴がない。鉄でできたドアらしきものはあるのに肝心のノブ、鍵穴がない。
「どうした? さっさと開けろ」
「この扉へんよ。鍵穴がなくって」
「ん、そんなことはどうでもいい。なんだ、ひょっとして開けられないのか? 使えない奴だなぁ」
 鼻くそをほじるランス。
「使えないってなによ! 鍵穴がないと『鍵開けの術』は使えないのっ」
「本当に開けられないのか? ちっ、そこをどいてろ!」
「えっ……きゃっ」
 鼻の穴から人差し指を抜き、ランスが跳躍した。
 手にはいつ持ち替えたのか漆黒の魔剣が輝いている。かなみは慌てて飛びずさった。
「でやぁっ!」
 ドがーン
 もうもうと立ち込める煙。カランカラン、金属同志がぶつかりあう音が響いた。
「ちょっ、ちょっと危ないでしょっ! 壊すならちゃんといってよっ」
「よし。扉も開いたことだし、マリアの家を漁るとするか!」
 かなみの抗議などどこ吹く風、一撃で砕かれたドアに満足げなランス。煙が立ち込めるなかズカズカ足を踏み入れる。
「もう、相変わらずなんだから……」
 パンパン。裾についた埃を払いかなみもランスの後を追った。
 ランスはいつもこうだ。いきなり突飛な行動に出て、かなりの高確率で事態を円満(?)に纏めてしまうのだ。
 ランスの後に続き、かなみも建物に入っていった。
 真っ暗だ。真っ暗な他人の家というものは、いつの時代も扱いにくい。
 ただでさえ汚いマリアの家、数歩進むたびに金属塊が足に触る。
「う〜ん、こう暗いと良く解らないなぁ。かなみ、どこが食堂か解らないか?」
「なんであたしに聞くの? マリアさんの家なんだから、あたしが知るわけないじゃない」
「忍者って鼻が効くんじゃないのか? こう、くんくんって」
「はぁぁ、そんなわけないじゃない……」
 壁に這わせていたかなみの手に違和感が走った。なにやら突起物に触れたらしい。
「?」
 パチン
「おおっ? な、なんだぁ?」
「きゃっ」
 突起物をポチッと押したとたん、真っ暗だった室内に煌々と明かりが灯った。
「何かしたのか? 俺様は何にもしてないが……なんだスイッチを入れたのか」
「す、スイッチ?」
 眩しさに目を細めるかなみ。
「それだよ。お前が触ってるソレだ。マリアの家ってあちこちにいろんなボタンがあるんだよなぁ」
「な、何か飛んできたりしない? 新手の罠だったり……」
「罠ぁ? がははは、そんな上等なものがあってたまるか。
 いつまでもビビってないでさっさと行くぞ。これで迷わなくって済むな」
 急に明るくなってかなみは相当ビックリしたのだが、ランスは全く動じていないらしい。
 何事もなかったようにスタスタ進む。
 かなみが押したのは室内全域照明ボタンだったらしく、建物全体に明かりがついたらしかった。
 片っ端からドアを開け、マリアの家を文字通り『漁る』ランス。工場、資料庫、客室に続いて二人は台所を発見した。
 食料は殆ど残っていなかったが、携帯食料の類があちこちに散乱している。
 ランスはその中から美味しそうなモノをかなみに拾わせると、台所を後にした。
 食料を調達したのだから、後はベッドを探すだけだ。バタン、バタン、バタン。
 四つ目のドアを開けた時ようやくマリアの書斎兼寝室についた。
 いかにもマリアらしく本と紙切れで溢れかえっている。
「ちっ、汚い部屋だな。まぁ野宿するよりマシってとこか!」
 ポーン
 かなみから食料を受け取るなりベッドに倒れこむ。ポリポリ、行儀悪く寝転びつつ齧る。
「ん? どうかしたか? 俺様はここで寝るから、お前は適当に別の部屋で寝てろ。一緒に寝るつもりはないぞ」
 立ち去る気配を見せないかなみ。ランスはぞんざいに言い放った。
 時刻は十時くらいだろうか? かなみに背を向けるランス。
「……俺様は疲れたから一発はナシだ。かなみもさっさと寝ろ」
 シッシッ
 虫を追い払うような仕草だ。ランスにとって最も辛い時間が始まろうとしている。
 こんな姿は誰にも見られたくない。もちろんかなみに見せるつもりもない。
「……解った。ランス、頑張ってね……?」
 背中を見せたランスは、不貞腐れた子供のように見えた。かなみは知っている。
 ランスはバレてないつもりかもしれないが、かなみは忍者だ。
 これから数時間以内に黒い靄が沸き起こり、ランスを包み込む。
 どんな苦しみを味わうのかしらないが、とにかく出鱈目に辛いことだけはおぼろげに理解していた。
「おやすみランス」
 出来るだけ普通を装いかなみは寝室を後にした。
 自分がランスの秘密に気づいているとしれば、きっとランスは嫌だろうと思う。
 自分の苦しむさまなんて誰にも見せたくないに違いない。だからこそかなみをベッドに呼ばないのだ。
 最初の頃は『どうして夜になったのに自分を呼ばないのか?』と疑問に思っていた。
 リーザス解放戦争時には、毎晩シィルかかなみが襲われたのにである。
 ランスの性格からしてセックス嫌いになったとは思えないし、昼間のエッチはいつものまま。
 ただ夜だけ大人しくなった。今では謎は解けている。
 夜になれば自分が苦しむ。苦しむところは見せたくない、だからかなみを呼ばないのだ。
 足音を立てずにさっきの台所へ向かう。台所にあったソファで眠るつもりだ。
 ランスを覗こうといった考えはない。見ているだけで辛くなる。
 明日のこと、解呪の泉のこと、リアのこと、メナドのこと……ランスのこと。
 いろんなことを考えながら、かなみはいつしか眠りについていた。





「ふん、なぁにが『頑張れ』だ……。かなみのアホめ、バレバレなんだよ……」
 ドアが閉まるのを見届け、吐き捨てる。
「しっかしいつバレたんだ? ……アイツはすぐ気配を消すからなぁ」
 これまでかなみには見せないようにしてきただけに、いつ覗かれたのか心当たりがない。
 忍者がパーティーにいると都合がいいことも多いが、隠し事が出来なくて困る。
 今だって足音がしないため、かなみが立ち去ったかドアの向こうにいるのか分らない。
 リーザスにいたころはかなみの気配くらい察知できたが、万全でない現在そうもいかないのだ。
「かなみ〜、そこにいるのは分ってるんだぞ〜」
 返事がない。
「返事しないとリアを助けてあげないぞ〜……よし、素直に行ったか」
 ゆっくり起き上がり、ランスはカオスを手に取った。
《……そろそろか?》
「ふん、まぁな」
 足元から立ち昇る黒い靄を眺めつつ、ランスが自嘲的に呟く。
 膝、腰、肘、腕、腹。きっと股間のハイパー兵器からも靄は出てきているだろう。
 最初は身体の各部分が靄で包まれ、最後には頭が包まれる。
 頭が包まれたとたん、いつものイメージがランスを襲う。この二ヶ月の間毎日同じパターンだった。
 スードリ平原でケイブリスに喰らわされた黒い魔法球。
 あれ以来夜が来るたび、暗闇が訪れるたびにランスを襲う幻覚の数々。
 ただの幻覚ではない、感覚を伴った幻覚だ。
 即ち『痛覚』『触覚』『聴覚』『視覚』『平衡覚』といった感覚全てを伴った幻覚。
 幻覚中に熱湯を浴びれば熱いし、目玉を潰されれば顔面に『グチャッ』とした感触が起こる。
 いうなれば傷つくことのない体で永遠に拷問を受け続けるようなものだ。
 幻覚は一分で去ることもあれば、十分近くランスを苦しめることもある。
 とにかく幻覚が去るまでの間、ランスは耐えることしかできない。
 何かを握り締めていなければとても耐えらない。いくらランスでも発狂してしまう。
 一時期はひたすら『痛い』イメージだったが、最近はもっと嫌なイメージに変わっていた。
 イメージに伴うものも『五感』に加えて『リアリティー』がある。
 イメージに襲われているときは、自分が幻覚を見ていることに気づかないのだ。
 夢から醒めた時だって、自分が今起きているのが夢なのか、夢が現実だったのか分らない。
 夢と現実がごっちゃになって、なにがなんだか分らない。夢から醒めても、どっちが現実だか分らない。
 だから誰かに縋らなければならない。夢が醒めた時、『これが現実だ』といってくれる誰かが必要だった。
 縋り付く対象として、ランスはカオスを選んだ。
 イメージにうなされているときのランスは怖ろしい力を手に込めるらしく、人間を抱くのはまずいと判断したからだ。
 それ以来発作が訪れるたびに黙ってカオスを握り締める。
 カオスならばどれだけ強く握っても壊れる心配はない。なんたって剣なのだから。
《男に抱きつかれるなど……ましておぬしに抱きつかれるなどと考えてもみなかったぞ》
「けっ。俺様だって好きでこうするんじゃねぇ」
《お互い男嫌いで通っているのに、なんの因果でこうなるのか》
「日光さんがいればなぁ……。あ〜、我ながら憂鬱だ」
 互いに文句を言い合うランスとカオス。そうこうする間にランスから立ち昇る靄が増える。
《この借りは必ず返せよ。そうだな、儂を封印していた神官だ。セルとかいった女をもう一度抱かせて貰おうか》
「けっ、相変わらず女しか頭にないんだろ。下品な剣だぜ」
《そういうおぬしだって同類だ。儂にはちゃんと分っているぞ》
「俺様は人間だからいーんだよ」
《儂だってインテリジェンス・ソードだから構わないんだ》
 軽口を叩きあったのも束の間、ランスの顔が急激に歪んだ。
「女の話は止めだっ……き、来たっ……」
 靄に包まれた瞬間、ランスはギュッと目を瞑った。
 目を瞑ったところでイメージは襲ってくるのだが、それでもつい瞑ってしまう。
 ランスだって怖いものは怖いし、嫌なものは嫌だ。
 どうにかできる類のものなら、どんな手段を使ってでも回避する。しかし幻覚からは逃れられない……。


――――――
 すでにランスは自分が現実にいるのか、夢をみているのか分らない。視界に映るのは……だだっ広い平原だ。
 何処かで見たことがある。そうだ、ヘルマンのスードリ平原だ。
 振り返れば累々たる死体。赤、青、黄色。いろんな鎧をつけた兵士が重なり合って倒れている。
 死体の山にはリック、レイラ、コルドバ、ソウル、バウンド……共に戦った戦友がズタズタに裂かれて死んでいる。
 ランスとて例外ではない。鎧は血で真っ赤に染まり、カオスだけが黒い。
 やたら下半身が痛むので足元を見れば、右足が付け根からなくなっている。
 どうりで歩けなくて、痛いわけだ……。
 と、ランスの頭上を影が走った。
 痛みに呻きながら顔を上げると、いまにも棍棒を振り下ろそうとするデカントがいる。
 ドガッ、ドガッ、ドガッ
 何もできない。ただあちこちの骨を砕かれるだけ。
 『ちっ、よりによってこんな不恰好な馬鹿にヤられるのかよ……』
 抵抗しようとしてもとき既に遅し。身体はピクリとも動かない。一際大きく振りかぶるデカント。
 『も、もう駄目か……』
 『ランス様ぁっ……ぎゃっ』
 『……え?』
 ビュン、風圧だけがランスを襲った。肝心の棍棒はランスには当たらない。
 何か『ゴン』という嫌ァな音は確かにしたのに。目を閉じた額に、ポツ、ポツリ。生暖かい液体が垂れる。
 『……あぁぁっ! し、シィルっ!』
 トサッ
 シィルだった。ランスを庇って棍棒に飛び込んだのだ。
 トサッ。頭蓋骨から血を噴出してランスの傍らに倒れこむ。
 『シィル……う、嘘だろ……嘘だ……こんなの……嘘だ』
 なにも答えない。口元から血が一筋、地面に落ちる。
 ランスは這い蹲ってシィルの元に辿り着いた。
 顔が真っ白で口から血が出ている以外、いつも見慣れたシィルの顔だ。
 笑顔のまま、笑ったまま目を閉じている。 
 決定的に違う点。シィルの頬が冷たい。人間の、血の通った肌じゃない。
 『た、頼むから嘘だといってくれ……! お、お前の死に顔なんて見たくないんだ……お、おいシィル?
  目を開けて……目を開けてくれよっ……』
 返事がない。
 『うっ……うがぁぁぁぁぁぁ―――っ!』
 ランスはもう何も見えなかった。目の前のピンク色以外、一切が視界から消え去っていた。
 動けないランスに出来ることといえばただ涙を流すだけ。
 シィルの仇を討つ事すらできず、ただただ泣き叫び続けた。
 シィルが死んでからどのくらい経っただろう? 振りかぶった棍棒がランスを襲う。
 泣き疲れて頭が真っ白になる様を体感しながら、ランスの意識は消えていった。
――――――


「はぁっ、はぁっ、はぁっ……? くっ、夢か? はぁ、はぁ、はぁ」
《安心しろ。どんな夢だったか知らんが、ただの夢だ》
「はぁー、はぁー、はぁー……そ、そうか。夢か……」
 いまにも倒れそうな息遣いを残し、ランスはカオスから手を離した。
 全身から大粒の汗が噴出している。顔色も真っ青で、まるで墓場から出てきたゾンビみたいだ。
《今回は十分ほどだったな。相変わらず何も覚えていないのか?》
「……ああ。何も覚えてない」
 嘘である。自分がどんな夢をみたか、ランスははっきり覚えている。
 ただしシィルが死んだ方が夢なのか、カオスと喋っている今が夢なのかは自信がない。
 ドサッ
 ベッドに倒れるランス。思いなおす。そうだ、シィルが死ぬはずがない。
 自分より先にアイツが死ぬなんてありえない。だからコッチが現実なんだろう。
「何にも覚えてはいないんだが……」
 フゥゥ
 深呼吸する。
「自分が嫌になるような気持ち……自己嫌悪ってやつか? とにかく嫌な気持ちだ。
 俺様ってこんなに弱い男だったのかってな。妙な気持ちだぜ」
《すべて魔王が見せる幻覚だ。いちいちとらわれるな》
「ふん。俺様が囚われたりするものか。見てろよ、クソケイブリスめっ。
 俺様が受けた屈辱、百万乗して返してやる……」
 グイ、額の汗を拭うとランスは寝返りを打った。たった十分だったのだろうか?
 丸一日叫びつづけたように疲れている。精神へ与えられる過度な負荷は、肉体へのそれと同じくらい消耗する。
「見てろよ……クソ魔王め……」
 怒りを吐き捨てるとランスはそのまま眠りに落ちた。誰が起こしても起きないくらい、深い深―い眠りだった。





 翌朝。誰もいないカスタムの街。
「ランスッ、もうランスってばっ!」
「ぐうぐう」
 いつものことだがランスは起きない。
「起きなさいよっ! 解呪の泉にいくんだったら、もう出発しないと間に合わないのに〜」
「う〜ん、ぐうぐう」
 ユサユサ、ユサユサ
「はぁぁ、シィルちゃんの苦労が分るわよ……なんでこんな馬鹿とやってこれたんだろう?」
 本心ではない。かなみもシィルがランスと一緒にいた理由を分りかけてはいるからだ。
 でも、そうはいってもランスは余りに手がかかる。
「もう知らないわよっ?」
 かといって起こさないわけにも行かない。起こさなければいつまで経っても起きてこないことは実証済みだ。
 ランスに行動して貰わない限り、リア救出への道のりは短くならない。
「あぁ〜! どうしたら起きてくれるのよっ!」
 かなみも決して我慢弱い方じゃない。しかしランスの爆睡ぶりに手を焼き、業を煮やして匙を投げた。
 その時背後から伸びる魔手。
 ムニムニ
「きゃぁっ! ら、ランス?」
「でへへ、そんなに俺様に起きて欲しいのかなぁ〜? それなら方法はただ一つ! とおっ」
「ちょ、ちょっと待ってよっ!」
 かなみがランスに背を向けたとたん、これだ。まったくランスという男、手がかかるというかなんというか……。
「ん〜? 俺様に起きて欲しいんだろ? 寝起きの一発、これで一日ギンギンだ!」
「『起きて欲しい』って、とっくに起きてるんじゃない! 一発するまでもないでしょっ」
「ちっちっち」
 ニヤニヤ笑う。
「そんなこといっていいのかなぁ〜? リアを助けて欲しいんじゃなかったのか?
 リアを助けるためならなんでもいうこと聞くんだろ?」
「うっ」
 それまでジタバタ暴れていたのが嘘のよう。『リア』というだけでとたんにシュンとなるかなみ。
「心配するな、万事俺様が何とかしてやるっ! がははは、朝っぱらから絶好調だ!」
 スパパパッ
 一秒で服を脱ぎ捨てランスはかなみに圧し掛かった。
 こうしてランスとかなみの一日が始まる。
 今日中に解呪の泉まではいけそうにないな……ランスに貫かれながら、かなみはそんなことを考えていた。





 ・・・あとがき・・・
 四話です。
 ところで三話のあとがきを見直して、『変なこと書いてるなぁ』と思ってます。
 ランスはあくまでもシィル一筋(?)です。(冬彦)






















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