一話 手に入れた孤独閑散とした大広間に湿った音が木魂する。 ピチャ、ピチャ、チュプ…… 液体が、様々な芳香と色合いをもった液体が当たり一面飛び散り、 本来高貴な雰囲気をもっていただろう調度が見る影も無い。 赤い絨毯は無残にも染みだらけ、ピカピカだっただろう床は傷だらけ。 ただ天井高くから仄かに光るシャンデリアだけがかつての輝きを保っている。 しかし、シャンデリアが照らし出す光景は無残以外の何物でもなかった。 褐色の、微動だにしない女達が累々と横たわり、動く影は中央に三つ。たったそれだけだった。 魔王城。 魔人界と呼ばれる地域の北にある、世界を統べる王・魔王が居座る場所。 何人たりとも敵わない力と権力を備えた魔王、ケイブリスが暮らす城だ。 大広間。 魔王ジル、ガイを始め歴代の魔王が王座を据えた場所である。 リトルプリンセス・美樹という唯一の例外を除いて、ではあるけれど……。 湿った音は、まさにその王座から響いていた。冷め切った眼差し、端整な顔立ち。 顔とまったく吊り合わない禍々しさを持つ六本の腕、八本の触手を持つ巨体。 そして巨体の足元にかしづく小さな影が、絶え間ない水音をさせている。 「……もっと舌を伸ばせ……深く咥えろ」 「……はい、魔王様」 頭上から響く怠惰な声に呼応し、濃い緑をした長髪が僅かに揺れた。 ピクピクッと眼前で揺れる触手をそっと両手に包むと、恭しいベーゼ、次いで細長い舌を絡める。 舌を伸ばしつつ口が開き、口腔の柔らかそうな肉が見える。 自分の腕と同様、いやもっと太いかもしれない触手を咥える口を開け、少しでも沢山口に含もうとする意図が見て取れる。 「ん、あむ……」 「そうだ……それでいい……」 ケイブリスが鷹揚に頷く。 身体の先端から伝わってくる温かさは、それ自体も心地よいが、彼の征服欲を満たしてくれる点で安らげるのだ。 自分に完全に依存した存在・高貴で冷徹な雌が己に尽くす…… かつての魔人・ケイブリスが求めて止まなかった光景が目の前にある。 さらにいえばこの暖かさは物理的に暖かいだけではない。 草原のように流れる髪をかきあげる仕草、冷たく引き締まった顎を自ら開く姿を伴った温もりだ。 単に咥えさせるとは全く違う。 いままでだって舐めさせた人間の雌は山ほどいるし、魔王になってからも攫ってきた人間の口に捻じ込んだりした。 そして、現に顎が砕けたり喉を突き破られたりした残骸が部屋のあちこちに転がっている。 彼女達の口も良かった。しかし所詮物理的官能は精神を伴った官能に及ぶべくもない。 「ん、ん……」 「ふふ、くくく……」 豪快さとはかけ離れた、静かで落ち着いた笑い声。完全に優位にたった者が下賎の民に向ける冷笑ともとれる。 高貴な、自分に絶対の自信を持った声色だ。 仮に声質が以前のケイブリスと同じだったとしても、誰が聞いてもケイブリスが笑っているとは思わないだろう。 げはは、ぐはは、ぐわぁはははは。 ケイブリスといえば下品。無知。粗雑。猥雑。彼のこういった特性は、如実に声色となって現れていた。 彼の声は、よく言えばビブラートが聞いた低音のしっかりした声。 素直に表現すれば絶えず耳を引っ掻き回す雑音で、例えるならガラスを引掻きながらゲップを撒き散らすような声。 この声で汚く笑うのだからどうしようもなかった。 今は、違う。第一に声自体がまったく異なる。 魔王の身体に馴染んだせいか、澄き透るようによく響く声に変わっている。 第二に口調が異なる。 マリス、ホーネット、シルキィといった魔人勢を犯すときは例によって下品さ丸出しだけれど、 今のようにひとしきり汗をかいた後は総じて冷静かつ淡々とした口調になる。 ケイブリスは変化した。魔人から魔王になり、次第に真に魔王らしく変化していったのだ。何故か? そこには一人の女性が大きく関与している。 マリス・アマリリス。 人間を捨てて魔王に全てを捧げた存在。 マリスという存在を得たことによってケイブリスが変わったといっても過言ではない。 しかし、決して 『マリスに愛されたことで、愛される素晴らしさを知った。愛をしって人は変わる』というような変化ではない。 ケイブリス自身は気づいていないが、事実はまるで正反対だった。 彼は、自分では理解していないけれが、自分が愛されないことを知って変化したのだ。 マリスは彼に尽くしてくれる。ああしろ、こうしろといわなくても大抵察知して事前に行動してくれる。 ヤりたいときは自分から楚々と服を脱ぐし、舐めさせたいと思えばもう跪いている。 気分転換にホーネットを嬲りたいと思えばホーネットをつれてくるし、 おやつにシルキィが食べたいと思えばシルキィをつれてくる。何もかもケイブリスが望む通りに動いてくれる。 けれど……尽くしてくれる、ただそれだけ。 笑えといえば笑うし、踊れといえば踊るし、死ねといえば死ぬのだろう。 ありとあらゆる命令、要請をこなしてはくれる。 ケイブリスは愛を知らない。だから、マリスが自分を愛していると思っている。 仮にマリスに『俺様を愛しているか?』と問えば、答えは『はい、魔王様』。 マリス自身が肯定する以上、彼女がケイブリスに向ける態度は、女が愛する男に向ける態度であるはずだ。 少なくともケイブリスはそう思っている。そして呆然となる。 これが本当の愛なのか、と。自分がカミーラに求めていたものはこれだったのか、と。 もっと甘くて、様々な感傷があって、漠然としていて、 一口では言い表せないような愛を夢想していたケイブリスにとって、マリスの愛は余りに淡白だった。 敢えて言うならば『完璧すぎる愛』ゆえにまったく『愛』らしいところがない。 傷一つない水晶は何の輝きも生み出さない。 内部にほんの少し疵・混雑物があることで光学現象の妙をつむぎだし、見るもの全てを魅了する。 マリスがケイブリスに向ける態度はまさに完全なる水晶だった。一片の混雑物、極小の疵さえ見当たらない。 ……カミーラさんとは大違いだ。 ―――――― 魔王になって最初の一週間は、それは凄まじい日々だった。 魔王になったことで無限大の体力を手に入れ、 千年にわたって焦がれていた伴侶を手に入れた彼が取る行動は一つしかない。 ヤる。 ただひたすら、たった一人の存在を貫き、噛み付き、上下に揺すり、眠ることも気絶することも許さず責め続けた。 八本それぞれが入れ替わり立ち代り穴という穴に侵入し、絶え間なく白濁を叩きつけ続けた。 発狂しない方がおかしい状況にあって、 けれどもマリスは顔色を一瞬苦痛に歪めるだけで、ケイブリスを受け止めきった。 ケイブリスがマリスを堪能するまで、彼が言うところの『愛のあるセックス』を満喫するまで耐え抜いた。 耐えるどころか、時には自分から腰を振り、相手の性を貪りもした。 一週間が過ぎ、ケイブリスは初めて眠りについた。 マリスはケイブリスの寝室まで彼を送り届け、そっとシーツをかけ、一礼して寝室から自室へと引き取った。 翌朝、ケイブリスが目覚めたときには恭しくベッドの脇で拝跪するマリスがいた。 リーザスで始めて見たときと全く同じ表情だった。 頬を染めることもなく、嫌悪で歪めることもなく、一週間がまったくなかったように平然と佇む姿があった。 こうして二人の暮らしは始まったのだ。 マリスを眺めるにつけ、ケイブリスは嬉しかった。 なにしろカミーラに代る、いやカミーラを超えるほどに端整なオーラを纏っている。 マリスと一緒にいればさぞ楽しいに違いないと確信した。セックスもよかった。 いままで犯したどの人間とも違ったリアクションだった。 人間は犯されるとき、最初は叫び、次に許しを乞い、そして泣き出し、最後はけたたましく笑う。 そして……何も言わなくなるのだ。一方マリスは違った。 終始変わらぬ無表情、時折漏れる喘ぎ声がいとおしかった。ケイブリスの琴線に触れた。 昼は魔王として魔人領支配、新たに加わった人間界支配の事務をマリス・メディウサにこなさせ、 夜はマリス、ホーネットを弄ぶ。新しい生活の始まりである。 定期的に届けられる人間をスパイスに、小憎たらしいシルキィ・ホーネットをオードブルに、 愛しいマリスをメインディッシュとした豪華な食事を毎晩続ける。 日替わりのスパイスは、毎日違った彩りを与えてくれた。 オードブルは、魔人だった頃の鬱憤が晴れるという隠し味を持っていた。 けれど、メインディッシュは『ただ美味い』だけだった。変化もなかった。 判を押したように同じ動作で服を脱ぎ、ケイブリスが支持するとおりにセックスをこなす。 淡々と書類を作るような営みは、最初こそ珍しくて新鮮だったが回を重ねるごとに空しくなっていった。 そう……マリスとのセックスは、ケイブリスにとって複雑なものになってゆく。 体は気持ちいいのに、心が気持ちよくなってくれない。心が、身体を重ねるたびに空っぽになっていくようだった。 自分が欲しいものと違うのだ。 虚しさは精神を蝕んでいく。ケイブリスの場合、精神が蝕まれたわけではない。 虚しさという、いままで知らなかった感情を初めてもっただけ。いうなれば彼は虚しさを知った。 古人曰く『求めれば、手に入らない。手に入ったと思えば、手に入れたい物と違っている』。 ケイブリスがこの格言を知っていれば、ふと呟いたりするかもしれない。 マリス、自分を愛する者との淡白な日々。いつ見ても変わらない横顔。 笑え、と命令しなければピクとも微笑まない顔。日がな一日マリスをジィーと見ていたところで同じこと。 マリスから自発的変化は現れない。ケイブリスは、マリスに笑え・泣けと命令する。 命令されればマリスはなんでもする。そして一つ命令をするたびに、ケイブリスはまた一つ虚しさを積み上げる。 何百、何千と虚しさを積み上げた結果、二ヶ月にしてケイブリスに変化が現われた。 ……マリスに感化されたのか、淡々とした言動が目立つようになったのだ。 ずうっとマリスを見ていたからかもしれないし、魔王とは本能的にそういうものかなのかもしれない。 つまり、絶大なる力を持つが故に世俗に対する感心を失い、物事に動じない性格になるのかもしれない。 もしかしたら両方とも当たりではないだろうか。 即ちマリスという媒体を経て、自分が求めていたものは絶対に手に入らないこと、 魔王という存在が吊り合う女を持たない絶対的主という事実を知ったからかもしれない。 ケイブリス自身にはわからない。 何故こんなに醒めているのか、何故気力・気迫が沸き起こらないのかわからない。 ―――――― 夜が更けた広間。夕方から響く水音はまだ続いていた。と、中央の影が立ち上がった。 ダラリと垂れた触手がスルスルと体内へ縮こまり、マリスの口から離れる。 ケイブリスは気だるそうにいった。 「もういい。俺様は眠る……」 そして、いつもと全く同じ返答が返ってくる。 「はい、魔王様。お休みなさいませ」 「……ふん」 ぼやけた眼差しをマリスから背け、ケイブリスは広間を後にした。 たった一本仕舞い忘れた触手を引き摺りながら寝室へ向かう。 魔人には、愛する人と共に眠るという習慣はない。眠る時はいつだって一人だ。 染み一つなく、血管が浮き出しそうな白い横顔に月光を浴びてケイブリスが歩く。その足取りは重い。 今日も一日変化がない一日だった。 朝起きてマリスを抱き、昼、マリスが支配体制を強化する様をチラリと眺め、 夕、マリスを抱き、ついさっきまで数時間に渡り性器を清めさせた。 このローテーションは昨日も、一昨日も、そのまた前日も寸分違わない。 ケイブリスをウキウキさせてくれる新しいマリスの表情は何一つ表れなかった。 ケイブリスが知らない彼女の一面は一つも見られなかった。 一日を通してケイブリスを訪れた感情は、『虚しい』……ただそれだけだった。 今夜は満月らしい。そとはやけに明るい。かつての魔人・ケイブリスは満月が好きだった。 『まん丸お月様見て吼える、ぐわおぉお〜』などと鼻歌交じりで月見に出たものだ。 だが、魔王ケイブリスの瞳は月を見ていない。 きっと今夜が満月ということも、自分が月を好きだったこともどうでもよくなっているんだろう。 ただ一人広間に取り残されたマリスは静かに服に手を伸ばした。服といっても繊維質ではない。 魔力でもってラバーフィルムを作り出し、衣服型に仕立て直した魔法服である。 スッ。 おもむろに手を服にかざすと、マリスは二言三言呟いた。 忽ち冷気が腕から迸り、マリスの全身そして服を覆う。すると張り付いていた白濁がすべて尖った結晶となった。 ピシッ、ペリペリ。 全身から零れ落ちる精液の欠片。マリスを中心に冷気が広がり、床に零れた液までが凍っていく。 差し込む月光と相俟って瞬時に凍てつく世界が出来た。 壁まで覆うくらい広がった冷気は室内の埃をも吸着し、月光に照らされて小さな結晶がキラキラ光る。 小さな、けれども鋭い光を浴びたマリスの裸体は美しかった。 夜毎ケイブリスに痛めつけられているにも関わらず、疵一つない真っ白な肌。 薄っすら吹き上げる冷気が白さに磨きをかける。 二ヶ月という期間でマリスもケイブリスと同様に変わった。 といってもケイブリスが内面を変えた一方、マリスが変わったのは外面である。 魔人としての立ち居振る舞い、魔力の使い方、魔人存在への理解、 ケイブリス内面の分析といった点で彼女は大きく進歩していた。 もともと頭脳はこれでもかというくらい優秀なので、人間時代はわからなかった魔人の謎も、 自分で体験したためにあらかた理解できている。 魔人。 人間だったころは『魔王に絶対忠実で、魔人・魔王・カオス・日光以外のあらゆる攻撃を跳ね返す』とだけ知っていた。 それも所詮文字で得た知識に過ぎないため、『魔人が投げた石ころは魔人に傷をつけられるか?』だとか、 『魔人に寿命はあるのか?』『絶対忠実とは具体的にどういうことか?』といった疑問は止むことがなかった。 魔人になって理解した。魔人は『魔人ないし魔王の意図が絡んだ衝撃で傷を受ける』のだ。 害意だろうと善意だろうと関係ない。魔人が直接関わった時点で魔人の意図が事象に伝わり、 その事象は魔人を傷つける力を持つ。 魔王とて同様だ。魔王が関わった事象がマリスを傷つけるものである場合、マリスは傷を受ける。 このことはケイブリスに抱かれた一週間で嫌というほど理解した。 魔王との交わりは死を超える痛みをもたらしてくれる。 同時に魔人が恐るべき回復力と魔力を持っていることも理解した。 神聖魔法言語をポソッと呟くだけで、人間だった頃の全魔力を凌駕する力が溢れだすのだ。 回復魔法が届いた瞬間、血を溢れさせていた傷が嘘のようになくなるのだ。 ケイブリスがマリスの胎内を、膣を、子宮を破壊している最中にマリスが漏らした言葉は喘ぎ声などではない。 苦痛に絶叫したくなる気持ちを抑え、マリスはひたすら回復魔法を唱えていた。 神聖魔法の中でもリアを守るために攻撃魔法ばかり学んだ彼女にとって、回復魔法は未知の領域。 けれど死に直面したからか、それとも魔人の秘めた力か、マリスは回復魔法詠唱に成功したらしい。 溢れる魔力をすべて回復に充て、内外問わず傷だらけになりながらマリスはケイブリスと交わった。 その際に、解ったことである。 付け加えるならば魔人の体力に対しても一考察がある。魔人の体力を例えるならば『小さな泉』。 マリスは敢えて『小さな』という形容詞をつける。『人間並み』という形容詞でもいい。 要するに普通の人間と同じように運動すればしただけ疲れるが、決して『ゼロ』にはならないのだ。 どんなに気絶したい、疲労で何もかも忘れ崩れ落ちたいと願っても叶わない。 もう駄目だと思っても新しい力が湧いてきて、もうちょっとだけ踏ん張れてしまう。 ちょっと踏ん張るとすぐまた限界が訪れるのに、またちょっぴり力が湧いてしまう。 恐らく魔人にとって体力とは、『いつでも勝手に湧いてきて、自分という器に蓄えるもの』。 自分という器が受け止める分だけ持てる力なのだ。 そして魔王の器は、マリスを一週間嬲って余りある大きさらしい。 マリスなんて最初の一時間で自分の体力の限界を感じたというのに……。 スッ。 冷たく輝くラバースーツに腕を、足を通す。スーツはケイブリスが拵えた。 ランス……リーザス王ランスが息の根を止めたドラゴン族の魔人・カミーラを髣髴させる衣装である。 とくにピンと立った襟元などはあからさまにカミーラを意識しているとしか思えない。 カミーラといえば、マリスはいくつか思うことがある。 マリスの推測に過ぎないが、ケイブリスはマリスとカミーラを重ねているように思われるのだ。 重ねるというか、マリスにカミーラそのものを求めているらしい。マリスはカミーラを全く知らない。 リーザス城でサテラから『カミーラというケイブリスに惚れられた魔人がいる』程度に聞いただけで、 見たことも喋ったこともない。全く縁がなかった。しかし今は違う。 マリスは、恐らくケイブリスよりもカミーラについてよく理解している。 高飛車で、高慢で、ケイブリスなど歯牙にもかけない女性。 愛想を振りまくこともなく、嫌いな存在は徹底的に無視・黙殺。 相手にしないこと、無関心を貫こうとするあまり明確な自己表現が出来ず逆にしつこく付きまとわれてしまう。 嫌いな相手の性格を分析すればどうすれば自分と相手が離れられるかわかりそうなものを、 嫌う余りに考えもしない怠惰な女性だ。 ケイブリスが求める人格を考え続けた挙句に到達した結論である。 これは、同時にケイブリスがどういった女性を求めているかの結論も出たことを意味する。 『自分を嫌う女性、自分を相手にしない女性』を欲する雄、それが魔王ケイブリス。 マリスが二ヶ月で到達した彼女の主に対する認識だ。 それゆえケイブリスは自分を嫌って嫌って嫌いぬいた女性……カミーラを欲したのだ。 愚かな存在だ。己を嫌うという性質に惚れるなど、愚の骨頂だ。 何故といば……だって、手に入れた時点で自分を嫌ってはくれないではないか。 例え魔王となって魔人・カミーラを支配したところで、既にケイブリスが欲したカミーラではなくなってしまう。 こんな理屈も解らないなんて、なんて……、 なんて愚かで、そして哀れな存在だろうか! 哀れだ。ケイブリスも、自分がリーザスに残した少女も、リーザスから連れてきた少女も、なにもかもが哀れ過ぎる。 片や自ら望んで孤独を手にし、片や他人の思惑に流され孤独の陥穽に陥れられた。 望むと望まないの違いは大きいが、結局行き着いた状況は全く同じ。 最愛の人を失い、二度と取り戻せないという点で等価である。 気持ちが悪いくらいフィットするスーツで身を固め、マリスもまた大広間を後にした。 背後では凍てついた空気が少しずつ和らぎ、冷気で包まれていた腐臭が再び広がっていった。 ・・・あとがき・・・ 第四章です。 これからは魔王サイド=マリス&シィルサイドになります。 二人がランスらしき人物をどう考え、そしてどう向かい合うのかをポソポソ書きたいな、と思っています。 ストックがちょっとしかないので、何話くらい四章が続くかわかりませんが…十五話くらいかなあ? 次回は『緑とピンク』です。 ちょっとダークなトーンですけど、付き合ってやってください。(冬彦) |
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