魔王ケイブリス 第五章 『JAPANの中の戦争』






  二話 山本家





 大阪城。古来JAPANを統べる人物が居城とした名城だ。
 天高く聳える天守閣、金箔が張り巡らされた茶室。どれをとっても美しい。
 幾何学的対称性にとんだリーザス城とは違う美がある。
 軍事用にたてられた城でありながら、どうしてこうもスマートなのだろう?
 すべからく戦いに作られた建造物は、簡素簡潔にして鋭いフォルムを持っているものなのだ機能美は時に芸術美を超える。
 五階、天守広間。甲冑と兜で身を包んだ武者が胡坐をかき、来る軍議に備えていた。
 大阪城城主、山本五十六が『急ぎの軍議を催す』という触れを出したため、大急ぎではせ参じたのだ。
 なお触れ主は『二十一』となっているものの、一歳の幼児に何ができるわけでもない。
 実際には五十六が全てを取り仕切っている。
 軍議開始にはまだ間があるため、そこここで私見が飛び交っていた。
「前田殿はご存知かな? なんでも大陸で不穏な空気が漂うというが」
「はっはっは。不穏と申されるか。全土を魔物に飲み込まれ、これ以上不穏になりようがないものを」
「もっとも。しかし仮にきゃつらが軍をポルトガルから進めたとすれば、いかがかな?」
「な、なにぃ? で、では本気で我らJAPANにまで出兵するとっ? ま、まことかっ」
「いやいや仮定に過ぎませぬ。ですが、あながち的外れでもないと思いますが?」
「むむ、うむむむむ……」
「それとも貴殿には他に軍議を開く心当たりでも?」
「ぬうう……」
 カスタムが落ちたことはこの場にいる全員が知っている。
 カスタムが落ちる=魔物が大陸全土を制覇した、ということ。カスタムが落ちてから一週間たった。
 魔物が新たな進軍を起こすとすれば今だ。そして進軍先はもはやJAPANしか存在しない。
 いかつく汗臭い鎧武者がいならぶ末席、マリア・カスタードとエレノア・ランが重苦しい空気に華を添えている。
 カスタム市民を保護してもらう代償として、カスタム軍はJAPAN軍指揮下にはいった。
 その為こうして軍議にも出席するのだ。
 ちなみにミル、ハウレーンは城下で身体を休めていて、ミリは二人の看病をしている。
「やっぱり魔人が攻めてくるのかしら?」
「攻めて来るんじゃない?
 あはは……何かさ、あたし達ってよっぽどついてないのね。まるで魔人を引き寄せてるみたい」
 なげやりマリア。開き直ったともいえるだろう。
 仮に魔物が攻めてきたとすれば三度目の絶望的戦闘が始まるというのに、緊迫かんのかけらも見せない。
 沈痛な面持ちのランとは好対照だ。ランはマリアを嗜めようとした。
 ただでさえカスタム組はJAPAN武者から厄介者扱いされているのだ。
 この上悪運を背負っているなどと思われちゃたまらない。
「そんな、嫌なこといわないでよマリア。もしそうだとしても……」
「リーザス、カスタム、続いてJAPANまでだもん。
 これじゃあ神様もしつこすぎるわ。もういいかげんにして欲しいよね」
「でも、もし魔人が戦争するとしたら残ってるのはJAPANしかないもの」
 そっとマリアの手を握る。
「魔人がJAPANを攻めるたって不思議じゃないわ。あたし達にツキがないなんてこと、マリアの考えすぎよ?」
「解ってるもん。解ってるけど、それでも言いたくなるじゃない。こうも戦ってばっかだとねぇ。あーあ……」
 マリアが溜息をついたのは、決して目の前に迫った戦争が理由じゃない。
 ランに言われた一言に思い辺りがあるためだ。
 『ツキがない』……ランはともかくとして、マリアは自分自身に運がないと思う。
「運が悪いとはちょっと違うけど、でもついてないよね、あたし達って」
 共にラギシスを師と仰いだ四人は、四人揃って不運が多いと思う。
 マリアも志津香もランもミリも、誰一人として合意に基づいた初体験をしていないのが何よりの証拠だ。
 しかも相手が同一人物ときているから救われない。
 四人の中でもマリアが一際不運に思える。
 思い当たる出来事は沢山あるけど、つくづくツいてなかった出来事といえば。
「まさかあたしに落ちてくるなんてね――」
 新たなるリーザス国王誕生の瞬間、即ちリーザス女王リアと新郎ランスの結婚式だ。
 リアが放り投げたブーケは、べそをかくマリア目掛けて落ちてきた。
 ゆっくりと、美しい放物線を描いてだ。バルコニー下には一万人以上観衆が押し寄せていた。
 その中からよりによってマリアに落ちるとは……泣きっ面に蜂な思い出である。
「? なにをぶつぶついってるの?」
「え? 別に、ただ『あたしついてないなぁ〜』って思ってただけ」
「そうかしら。私から見ればマリアだって幸せに見えるけど……あ、五十六さん」
 ランがマリアをフォローしようとした時、ガラリと正面の襖が開いた。
 流麗に流れる黒髪を簪に束ね、白絹に紺をあしらった袴。
 山本家家紋・葵をあしらった羽織りを纏った姿は凛々しいの一言に尽きるだろう。
 五十六が姿を見せたとたん、私語が嘘のように止む。会場全員が五十六に目を向ける。
 半分くらいは主に敬意を払う臣下の目だったが、中には憎しみを含んだ視線や軽蔑を含んだ視線もあった。

――――――
 織田家に代ってJAPAN当主となった山本家だが、順調にJAPANを支配しているとはいい難い。
 とかく『大陸を統一したリーザス王を背景にしている』、『JAPANを寝返って大陸についた』、
 『リーザス王に体を売った』、『女のくせに』などなどの悪評が壁となり、JAPAN人心を掴みきれないのだ。
 悪評が根も葉もないならば反論しようもあるだろうが、
 ランスハーレムにいたことは事実だし、JAPANを裏切ったことも事実。
 リーザスを背景にJAPAN支配権を得たわけであり、なにより五十六は女。
 『女は家内を守れ』という発想が根強いJAPAN男性にとって、女に仕えること自体が苦痛である。
 五十六個人がしっかりした人物だということ、これはいまさら説明するまでも無い事実。
 冷静に新しい主君を観察した武将達は、すぐさま五十六を主と認めた。
 偏見や先入観なしに物事がみえるなら、五十六が持つ聡明さ・清潔さ・強靭さは人の上に立つに相応しい。
 ただ人をフィルムなしに見ることが出来る人物もいるが、そうでない者もいる。
 悪評、己で築き上げた偏見に乗っかり五十六に反感を抱くものもいた。
 けれど表立って五十六を覆す相談はなされていない。
 織田信長亡き後目ぼしい人材がいなかった点もあるが、誰がこの時期好きこのんで人の上に立つだろう?
 魔人という超強力な敵を前にして『俺が仕切る!』なんていえやしない。
 というわけでJAPAN軍は表向き一枚岩に纏まっていた。叩けば楽に壊れそうな岩ではあったけれど。
――――――


「五十六様。早速ですが如何なる故あって我らを御呼びになられたのでしょう」
 ズイと進み出る初老武者。JAPAN筆頭家老、池田大作だ。
「もしや天満橋向こうで何か動きでもございましたか? それとも魔人共が川中島を攻めにかかったのですか?」
「そう先を急ぐな。まだ魔人軍が動いたわけではない。加藤、代って皆に話せ」
 口角泡を飛ばす家老を制し、傍らに畏まった武者を促す。
「ははっ」
 主に水を向けられた武将、加藤疾風。五十六がJAPANへ下る際にバレスがつけた副官だ。
「ではそれがしより説明仕ります。忍びが偵知した知らせにございますれば……」
 加藤疾風がもったいぶった口調でいかめしく喋る。
 喋っている時間は長いけれど内容は薄い。末席で聞いていたマリアは思わず、
「なによ。要は『六月二十六日』……明後日天満橋を攻めてくるっていえばいいのに」
 と愚痴っていた。マリアがいったとおりで、もしも語り手が加藤でなければものの三分で語り終えただろう。
 仮にマリアが加藤の代わりに喋るとすれば、
 『ポルトガルでガルティアとパイアールが会談し、JAPAN侵攻を六月二十六日に設定した』とだけいうだろう。
 JAPAN忍者が調べただとか、ポルトガルのプルーペット家でガルティアとパイアールが会ったなどと喋らない。
 加藤は得意げに続けた。まるで自分が苦労して情報を手に入れたような口振りだった。
「……という次第。しからばこちらとしてはどのような手を打つべきか、この場にて決定するべきでござろう」
 一呼吸おいて周囲を見渡す。
 ある者は『やはりきたか』、ある者は『もうきたか』、ある者は『きてしまったか』。
 誰しもが予想してはいのだろう、取り乱す武士はいなかった。
 もちろんマリア、ランにしたって落ち着いている。
「皆の衆、何か思うところはあるか? 思うところがるならば遠慮なくいって欲しい」
 床机から五十六が声をかけた。
 というのも普段であれば加藤に続いてそこここから声が上がるはずなのに、今日に限って誰も発言しないからだ。
「どうした? 戦いに関係なくとも良い、遠慮はいらないぞ」
「……しからば拙者に所存がござる」
 筆頭家老、池田大作だ。
「む。構わん申すがいい」
「ははっ。それがし天満橋に防衛陣を設け、水際にて侵攻を抑えるべきかと」
「たしかにJAPANで防衛するならば狭い地点がよいでしょうな。しかし我々が魔物と戦って勝てますかな?」
 加藤が口を挟む。荒ぶる池田。
「加藤殿っなんと申されるか! 我々JAPAN兵が戦闘力で魔物に劣るとでもっ?」
「い、いや決してそのようなことは……た、ただ」
「ただ? 『ただ』の次はなんでござる?」
「いくらJAPAN武士が強固といえど、敵は多勢、味方は無勢。これでは苦戦は必死かと……」
 池田に圧され、加藤はしどろもどろである。けれど言っていることは決して的外れではない。
 魔人軍凡そ一万、JAPAN軍凡そ二千五百。カスタム組千を足したところで敵三分の一に過ぎないのだ。
 だいたい兵一人(一匹)当たりの戦闘力にしたって、JAPAN兵よりモンスターが上だ。
 池田は自分達を過信している。
「さればこそ天満橋で防ぐに如かず! 狭い地域ならば兵個々の強さがものをいうのだ。
 ならば我らJAPANに分があるというもの! のう五十六様、左様に相違有りますまい?」
「ふむ……」
 五十六は池田に同調しなかった。何しろ五十六は魔物の強さを知っている。
 カミーラ屋敷へ侵攻する際、モンスターと平地会戦を繰り広げたからだ。
 直接剣を交えたことはなかったけれど、リーザス兵と魔物兵では魔物軍に分があったと思っている。
 遠距離攻撃と戦術をまじえたればこそ五十六達人間勢は勝てたが、作戦なしにぶつかったなら負けていた。
 リーザスに敗北したJAPAN兵ならいわずもがな。
 確かに武士個人個人は相当強いが、それでも魔物単体に分があると思う。
 池田に圧される加藤。しかしただでは黙らない。
「そ、そうですなぁ。魔物だけが相手ならば我らが勝利は揺るがんでしょう」
「加藤殿、まだ我々が負けるとでも申されますかな?」
「決してそのような……。ただ魔人とどのように戦われるつもりかはお聞きせねば」
「むむ」
 今度は池田が黙る番だ。カスタム戦争と違い、JAPAN戦争では最初から魔人が前面にたっている。
 食欲魔人・ガルティアと天才魔人・パイアール。
 両魔人が出てくる以上、すでに実質的には勝敗は決したといえるのだ。
 カスタム戦争では最初魔人が参入しなかった。モンスターが大群で攻めてきて、カスタム組が迎え撃つ形式。
 圧倒的強力な魔人が暴れまわり、カスタム一般兵が砕かれるという展開ではなかった。
 だからこそ戦争が成立したのだ。
 もしも最初から魔人が戦闘に参加していれば、カスタムとて一日で陥落したことだろう。
 それが証拠に魔人参入を聞いた途端にカスタムは降伏した。
「しかし我がJAPAN魂には神風が宿っておる。戦は何が起こるかわからぬのだ!
 それとも加藤殿は魔人に降伏しろとでも申すのか?」
「ほほう池田殿の口から『降伏』とは思いがけない。拙者降伏等と一言も申しておりませんものを」
「さっきから聞いておれば調子に乗りおって……では加藤殿はいかようにお考えか」
 他人を論駁するばかりで己から提言はしない男。後ろ向き意見は連発するも、前向き提言はできない男。
 批評はできても建設はできない男。それが加藤疾風だ。
 いざ『加藤殿はどうしたいのか?』と問われれば、浮かぶ言葉の一つも持たない。
「ですからこうやって五十六様が会合をもたれてたのでしょうにっ。
 良き考えを持つ人間がいれば従い、良き考えがなければ話し合う。
 これしかないのではありますまいか?」
 はぐらかすことしかできない。話し合うこと自体に価値はないことを、加藤は理解できてはいない。
 話し合いから生まれる提言、相互理解、協調関係こそが価値を持つのに。
「ふん、さしたる意見も持たぬ余所者が……っ」
 池田は吐き捨てるように呟くと、もといた場所まで引き下がった。
 池田が退いた分だけ加藤が前面にでる。
 それから加藤を中心として話し合いが続いた。
 とうとう誰からも妙案はでず、かといって降伏路線は一蹴される。
 徹底抗戦という路線を、リーザスという先例があるため、取らざるを得ないのだ。
 『天満橋を渡りポルトガルを奇襲する』『天満橋を壊して魔物軍侵攻を止める』『大阪平野で一大会戦を開く』
 等等いろいろ意見がでた。だがどれも本質的解決には結びつかない。時間稼ぎの域を出ないものばかりだった。
 最終的に五十六が採用した意見は『天満橋水際で敵を喰いとめる』、池田大作が具申した案となった。
 続いて詳細討議に移る。発案者たる池田が中心になり、甲論乙駁話し合いが続いた。
 結局『今日中に全軍率いて長崎に発ち、魔物が攻め込む以前に防衛線を敷く』と決まる。
 作戦成立を機に各武将が天守を去り、五十六、加藤も自室へ戦支度しにいった。
 残されたのはマリアとラン二人だけになった。
 JAPAN勢が去った広間で、マリアはランにポロリとこぼした。
「ふう。結局戦うのかぁ」
「だけど皆わかってるのかしら? 魔人が敵にいる以上、絶対に勝てないこと」
「解って無いんじゃないの? 解ったからって何が変わるわけでも無いけどね」
 マリアが立ち上がる。
「いいじゃない、魔人が来ても来なくても。もうこれ以上逃げる場所はないんだから、力一杯戦わなくちゃ!」
「……マリアって、志津香がいなくなってから明るいなぁ」
 笑顔でガッツポーズを決めるマリアは、ランにとって眩しくもあり不思議でもあった。
 志津香がいなくなっててっきり落ち込むと思ってたのに、まるで正反対だったからだ。
「何? あたしが明るいといけないの?」
「そんなこといってないけど……すごいなぁって思って」
「あはは、あたしなんかよりランの方が凄いわよ。JAPANとの交渉、カスタム撤退、ぜーんぶランだからできたのよ?
 志津香もハウレーンさんもいない中、ランはよくやってるわ。もっと自信持ちなさいって」
 ポンポン、まるで覇気がないランを小突く。
「あ、ありがとう。でも私なんてやっぱり駄目で、明るい表情だって無理しないと作れなくて……」
「あたしだって無理して笑ってるんだけどな」
「でもマリアってば、全然自然体じゃない。あたしなんてその点……」
「もうそんなこと言わない! 大丈夫よ、ちゃんとなるようになるわ。
 逆に言えばなるようにしかならないんだから、明るく笑った方が楽しいわよ?」
「そりゃそうかもしれないけど。けど」
「ほら、ランも立って!」
 いつまでもうじうじ悩むランの手を取り、マリアは強引に引き上げた。
「行きましょ、ミリが待ってるわ。五十六さんは今日中に出発するらしいから、あたし達も準備しなくちゃ」
 グイ、腕を引っ張る。これまでに無い積極性がランを戸惑わせた。
 『ランス死亡』の知らせを受けてからというもの、マリアがこうも明るい様は見なかったからだ。
「ね、ねぇマリア大丈夫? 何か悪いものでも食べたんじゃない?」
「……失礼ね。あたしのどこがいつもと違うのよ」
「え、と。その、吹っ切れたところとか、明るいところとか」
 躊躇いつつも正直な感想。
「……じゃああたしって、いつもはウジウジしてて暗いってこと?
 吹っ切れてなくて、明るくないってつまりそーゆーことでしょ」
「あっ、ううん、そんな意味じゃないの……」
 慌てて取り消そうとするラン。マリアは笑ってランを制した。
「いいのよ、確かにこれまであたしはウジウジしてたかもしれないしね。
 吹っ切れてなかったって言われれば、思い当たること結構あるもん。あはは」
 狭くて急な階段を下りる。二人並んでは降りられないので、さきにマリアが降りた。
 ランに背を向けてゆっくり進む。ギシギシ、木特有の音が響く。
 と、マリアがポツリ。囁いた。とても静かな囁きだった。
「あたしね、ランスを待ってるんだ」
「え?」
 ランからはマリアがどんな顔をしているか窺えない。
「これまでは皆が……っていうか、志津香よね。
 志津香がいたから無理して忘れようとしてたの。あたしは本当は忘れたくないのに、忘れなくちゃって。
 頼ったりしちゃ駄目だって」
「え、え? 何言ってるの?」
 階段がたてる雑音に紛れてよく聞えない。
「あはは……。あたしって結局忘れられなかったし、考えないでいるのも無理だったわ。
 その内幻聴まで聞えてくるし、アイツの夢なんて毎日みるんだもん。
 夜が来るたび夢に出てこられちゃどうしようもないわよね」
 ランには殆ど聞えてこない。きっとランじゃなくて、自分に喋ってるんだな、とランは思った。
 だから黙って聞く振りをした。
「だけど志津香だって自分が一番いいって思う道に行っちゃったし、
 あたしもそうしたって構わないんじゃないかなって思うの。ううん、そう決めたの」
 大阪城の階段は長い。長くて狭くて薄暗くて、人をセンチメンタルにさせる。
「だってそうじゃなきゃ志津香ばっかりズルいもん。
 あたしにだけ無理させといて自分は好き勝手するなんてズルい」
 ギシギシ。手すりがないせいで一歩一歩用心しつつ降りる。
「だからあたしも好きにするの。あたしは決めたんだもん。
 絶対ランスが助けに来てくれるって、そう決めちゃったもん。
 だからランスが来てくれるまで頑張って、それでいいの」
 そしてマリアは口を噤んだ。階段という名の暗いトンネルを抜け、階下光が差し込む廊下が二人を出迎えた。
「……私もマリアが明るくなれるなら、それでいいと思うわ」
 ランがマリアに声をかける。
 マリアの独り言なんて聞き取れなかったけれど、なんとなーく内容をつかめたランだった。
 マリアは何も言葉を返さず、黙って背中で頷いた。





 時は六月、青葉の季節。新緑が群青へと移ったある日、大阪から三千の兵が出兵する。
 軍容を簡略に記述すると、
 JAPAN軍 総大将 山本五十六 弓兵 1000
 JAPAN軍  副将 池田大作  武者 300
 JAPAN軍  将軍 加藤疾風  足軽 1200

 カスタム軍  ラン隊   魔法兵     200
        マリア隊  チューリップ兵 350
        ミリ隊   リーザス兵   450

 となる。都合3500の兵力だ。
 一方でポルトガルに集結しつつある軍勢はといえば、

 魔人軍 ガルティア くいもん   4000
     パイアール PGシリーズ 1000
     魔物将軍  モンスター  4000
     魔物将軍  魔法使い   1000

 という、計一万の大軍。JAPAN、天満橋を舞台として、彼らが激突する日はすぐそこまで迫っている。





 ・・・あとがき・・・
 二話です。
 マリア達のお話です。
 次回は五十六の話で、タイトルは『玉籤神社』です。(冬彦)
















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