鬼畜幼稚園R




第二話 『ランス君捕まる!』





 ここはリーザス幼稚園、県内最大の幼稚園だ。
 そして、ここはジャングルジムの前、キヨロキョロしているエクス・バンケット(5)とハウレーン・プロヴァンス(4)。
 ジャングルジムの中には・・・あれれ? ランス君の膨れっ面だぞ?
ランス「・・・おい、エクス。お前とハウレーンちゃんはここから動かないのか?」
エクス「ええ」
ランス「いまだけだろ?」
エクス「ずーっと、ですよ? みんなが捕まるまで」
ハウレーン「なんだかエクス、楽しそうだね」
エクス「ははは、ランス君がムスッとしてるのが楽しくてね」
ランス「ぐ、ぐぐぐ・・・」
エクス「しかし、一番最初にランス君が捕まるなんて思いませんでしたよ」
ランス「ふんっ、あれは運が悪かったんだっ! でなくて俺様が捕まるもんかっ」
エクス「ところで、どのようにして捕まったんですか?」
ハウレーン「あっ、それ、あたしも聞きたい」
ランス「・・・ふんっ」
 そう、真っ先に捕まったのはランス君でした。いやー、捕まるのは早かった。
 通常の三倍の早さだ・・・ゲホッゲホッ、ゴホン。
ランス(くそ〜、まさかあんなところから志津香が出て来るなんてなぁ。誰が分るんだ?)
 

 スタート直後の猛ダッシュ、噴水辺りまで走ってからふと気付く。
ランス(あれ、誰もついてきてないんじゃないか? まったく、世話がかかるぜ)
ランス「おーい、シィルー。マーリアー、俺様はここだぞー」
 返事がない、ただの屍のようだ・・・すんません。
ランス「ちぇっ。もうはぐれるのかよ、仕方ないな・・・お、あれってバレスか?」
バレス「ランス殿〜、今行きますぞ〜」
 バレスだよ、間違いないよ。ランス君、なんか表情が冴えないぞ?
ランス(どうせならハウレーンちゃんか、レイラちゃんか、女の子に追いかけて欲しかったのに・・・
    よりによってこいつかよ。はぁぁ)
バレス「ランス殿、はあふう、追いつきましたぞ〜」
 噴水を向かって面と見詰め合う二人。
バレス「はあはあ・・・ぽっ」
ランス「ぐはあっ!」
バレス「ランス殿、いま参りますぞぉぉ」
 グルグル〜グルグル〜
バレス「お待ちくだされっ! ふうふう」
ランス「へへっ、誰が待つかってんだよ。ジジイだけあって息切れも早いなあ?」
 グルグル〜グルグル〜
バレス「ひいふう、ぜえはあ・・・パタン」
ランス「何だもう終わりか。ふうふう、じゃ、俺様はあっちに行くからな。またな、バレス」
バレス「ググ・・・無念。志津香君、後は任せた・・・」
 倒れたバレスをグリグリ踏んづけてから、噴水を立ち去ろうとするランス。その後ろには、危ない目つきの少女が!
志津香「えぇーいっ!」
 ペシペシペシッ
 響く三発の平手打ちっ、ランス君の背中に炸裂だっ
ランス「げげっ、し、志津香じゃないか! いつの間にこんな近くに・・・!」
志津香「や、やった、やったわ! エッチランス、逮捕よ!」
ランス「い、いんちきだ、ずるいぞ! どうやってここに来たんだっ」
志津香「ふっふーん、あれよ、ア・レ」
 得意そうに後ろを指差す志津香。
ランス「アレって・・・ゴールデンハニー? あっ、着ぐるみハニーかぁ・・・」
志津香「いつぞやのお返しよ。一人でもったら重いのなんのって・・・、とにかくランス!」
 ビシッ
 ランスを指差す。
志津香「逮捕。正義は勝って、悪は滅びるのよ! ああ〜、気持ちいい〜」
ランス「き、着ぐるみを外に出したらいけないんだぞ〜」
志津香「エッチランスを逮捕できるなら、いくらだってカフェ先生に謝るもん。そーんなことより、ラ・ン・ス?」
ランス「なんだよ、畜生・・・」
志津香「さっさと来なさいよ、あたしが直々に牢屋に入れてあげるんだからっ。ホラッ、手を出す!」
 ガシッ
 ランスの手を強ーく握る志津香。
志津香「バレスさん、お疲れっ。こいつを閉じ込めたらまた来るからね〜」
ランス「イテッ、逃げないから引っ張るなっ」
志津香(き、気持ちいい・・・ コイツを捕まえるのがこんなに気持ちいいなんて・・・
     ガキの遊びも捨てたもんじゃないわね)
ランス(俺様と志津香が手を握ったのって初めてじゃないか・・・? シィルとは違った柔らかさだな。
     こいつ、俺様を見ると、いっつも逃げてばっかりだもんなぁ。
     うーむ、志津香に捕まるのって、案外楽しいかもしれない)
 にぎにぎ
 ちょっとだけ捉まれた手に力を入れてみる。暖かい・・・ 志津香はといえば、
志津香「ラン・ランララランランラン・ラン・ランラララン」
 鼻歌を歌ってご機嫌である。対照的に不機嫌のなランス君。ご機嫌な志津香をみながら苦笑いだ。
ランス(うわ、すっげー嬉しそうだ。チッ、俺様を捕まえたのがそんなに嬉しいのかよ、可愛くないぜ・・・
     って、いや、笑った顔は、あれぇ? うーむむむ、こいつは本当に志津香か?
     こいつ、こんな顔も出来るんじゃないか)
志津香「おーい、エクスくーん。馬鹿を一匹捕まえたよー!」
エクス「あっ、志津香さん。はやいですねぇ・・・ランス君?」
志津香「はーい、ハウレーンちゃん、連続婦女暴行犯を引渡しまーすっ」
ハウレーン(『ふじょぼうこう』って何だろう? まあいいか)
ハウレーン「はいっ、受け取りました」
ランス「・・・なあ、エクス。『ふじょぼうこう』ってなんだよ。おい、笑ってないでこたえろよな」
志津香「ふーんだ、『ふじょぼうこう』ってのは、ランスみたいなエッチなヤツのことよっ。
     そこで反省してなさいよねっ。じゃあね二人とも、次の泥棒捕まえてくるね〜」
 テテテテッと駆けていく志津香。見送る笑顔二つと、ぶーたれ少年一人。
エクス「では、ランス君、ここに入っててくださいね。ふふふ、それにしても志津香さん、嬉しそうでしたねぇ」
ランス「ちっ、俺様としたことが、抜かったぜ・・・ あー! もう! ムカつくぞー!」
エクス「仲間が来るまで脱走したらダメですよ?」
ランス「うがぁーーー、志津香のアホーっ! いろんな意味で腹立つぞ〜〜」
 運動場にいた全員が振り返るくらいに大きな叫び声だった・・・


 そんなわけでランス君は一人ぼっちでジャングルジムのなかだ。
 一人ぼっちというのがよくない。話し相手がいないと退屈だ。
ランス(シィルでもマリアでもいいから、さっさと捕まれっての)
 おいおい、そんなことでいいのか?
ランス(どっちもトロいからすぐに両方捕まるだろうけど。
     天才の俺様が捕まってるから、もしシィルとマリアが捕まった時は・・・
     残りはミルとラン・・・ え? それだけ?)
 指を折って数えながら、ふと気付く。
ランス(敵はエクスだろ、ハウレーン、馬鹿志津香、クソジジイ、リック、レイラさん・・・おいおい、六人もいるじゃないか!
     こっちは五人だぜ)
ランス「やい、エクスッ。ずるはなしだぞっ!」
 おお、ランス君、なんだいきなり。
エクス「はい?」
ランス「はい?、じゃねー。俺様達ランス盗賊団が五人で、なんでヘッポコ警察が六人もいるんだ!」
エクス「ボンクラ警察ではなかったですか?」
ランス「うるせー、黙れ。とにかく、だ! こいつは不公平だぜ」
エクス「そうはいっても合わせて十一人なので、足しても二で割れないですよ?」
ランス「うん? 合わせて十一人・・・ そうか、確かにそうだな。
     よし、こうしよう! いまから俺様が復活して、それで帳消し・・・」
ハウレーン「なにいってるのよ。そんなのズルイッ」
ランス「だああ、わかった。だったら、誰か一人俺様がスカウトする! それならいいだろう?」
エクス「はあ?」
ランス「ここを通りかかったヤツを一人だけ、ランス盗賊団にいれるぞ!
     俺様がリーダーだから、俺様が選んでも誰も文句は言わないぞ。
     そうだ、それなら人数も一緒になるし、文句ないだろう」
エクス(強引な理屈ですね・・・ 本来ならゲームを始める前に取り決めなければならないことを、
     あとからねじ込んできますか・・・ とりたてて要求を呑む義理もありませんけれど、さて、どうしますかね・・・)
ランス「うむ、われながらナイスアイデアだ。なあ、ハウレーンちゃん?」
ハウレーン「うーん、なんかそっちだけ都合いい気がするな」
ランス「そんなことはない。全人類にとってプラスの選択だ、エヘン」
エクス(ランス君、それはありませんよ・・・ しかし、それほど無茶苦茶な要求でもありませんね)
エクス「分りました、いいですよ」
ランス「おう! それじゃあ早速・・・」
エクス「待ってください」
ランス「なにぃ?」
エクス「新しいメンバーが誰にするのかは、警察が全員集まってからにして下さい。
     誰がドロボ・・・いや、盗賊になるのか分らなくては捕まえようがないですから。
     それと、僕はいいですけど、ほかのみんなが一人でも嫌だっていったらダメですからね?」
ランス「ぶー、ぶー。おい、やけに真剣じゃないか。たかがガキの遊びだぞ?」
エクス「たしかに。けれど、たかが遊びとはいえ、みなに一目置かれた人物をへこませるのは楽しいものですよ、ふふふ」
ランス(一目置かれる・・・俺様のことだろ。?俺様のことを褒めてるのか、馬鹿にしてるのか・・・?
     うむむ、エクスって、こんなに性格悪かったっけ? しっかし、なんで俺様がこんな目に・・・
     そうだ、志津香だ。アイツ、今度会ったらランスアタックを決めてやる・・・ くそー、くそー、がおー、がおー)
 頭の中で志津香をからかうランス君。
ランス「む、むなしい・・・」
ハウレーン「? なんかいった?」
ランス「なんにもいってないぞ、くそぅ・・・ うがあーっ! シィルでもいいからさっさと助けにこいーっ!」
 ランス君、あせらない、あせらない。すぐに誰かがやってくるさ。ま、捕まっちゃってるだろうけど。
 ほらほら、シィルちゃんじゃないけれど、ただいまミルとランが大ピンチだぞ!


ラン 「ミルちゃん、どうしよう・・・」
ミル 「ラン、諦めようか?」
ラン 「ダメだよ、諦めちゃダメだよぅ」
ミル 「けどなぁ、もう無理だろ?」
 
 場所はリーザス幼稚園誇る『ロング滑り台』。ぜんちょう50メートルのロングでビッグな滑り台だ。
 スタートから二人は何を思ったか、滑り台へ逃げ出した。
ミル 「やっぱりさ、高いところに上った方が警察を見つけやすいかなって。あははは」
ラン 「そうそう、逃げる時も滑り降りれば楽かなぁ〜って・・・」
 アホだっ。いや、園児らしい考え方は大好きだぞ〜 そして、『泥警』改め『ランス盗賊団とボンクラ警察』開始五分後、
ラン 「あっ、きたよ! レイラちゃんが滑り台に上ってるよ!」
ミル 「ようーし、じゃあ滑って逃げよう!」
ラン 「うん!」
 ツツツツツー
ミル&ラン「ああっ!」
 十メートルくらい滑ってから二人が何かに気付いたぞ? ああっ、滑り台の下にはリックが!
 そうか、レイラとリックのはさみ打ちかぁ。 滑り台の途中に脚を踏ん張ってこらえるラン&ミル。

ミル 「こいつは失敗だな・・・」
ラン 「ど、どうしよう・・・?」
 おおっと、うえからレイラさんも滑ってきたぞ。リックもしたから上ってくる。
レイラ「二人とも降参しなさい!」
 うえから響くレイラの声。
ラン 「わっ、わっ。レイラちゃん滑ってきたよぉ〜」
ミル 「ダメだこりゃ」
 リックに背中を叩かれるよりは、レイラさんの方がいいよね。というわけで、ミル&ランは綺麗に逮捕されたのでしたっ!


レイラ「おーい、ハウレーンちゃーん、エクスくーん! 二人も捕まえたよー」
ハウレーン「わあ、すごおいっ。これであと二人かぁ」
リック「あれは・・・キング!」
エクス「お帰りなさい」
ランス「・・・ふんっ・・・」
 ランス君はご機嫌斜めだ。
ランス(おいおい、ミルが捕まったら誰が俺様を助けるんだよ・・・)
ミル 「悪い、ランス。捕まっちゃった」
ラン 「ぐっすん」
ランス「ちっ、つかえない奴らだぜっ」
 おいおい、一番最初に捕まった人間の言うことか? これで後は二人、大丈夫かな〜。
エクス「リック、レイラさん。二人ともしばらくここで待っててくださいね。ランス君から新しい提案があるんだよ」
リック「? どういうことだい?」
エクス「実は、かくかくしかじか・・・」
 牢屋の中の三人と、牢屋の外の四人がペチャクチャ喋っていた時刻、シィルとマリアはどうしてるんだ?
 実は・・・もう逮捕されちゃってたりして・・・?


志津香「バレスさん、起きてよー」
バレス「ふう、ふう。いや、まったくあれほど走ったのは久しぶりですわい」
志津香「うん、おかげであのエッチを捕まえれたわ。それじゃ、ほかの人を捕まえに行こうか」
バレス「いや、じつは儂はまだ足が・・・」
志津香「え?」
 あれれ、バレスの足がわざとらしく震えている。
バレス「足が思うように動かんのでの・・・ とても走ったりできんのです。
     一度ジャングルジムにもどって、ハウレーン君あたりと役目を交代したいのだが」
志津香「・・・ふーん、ならそうしたらいいよ。あたしは一人で追っかけるから、バレスさんはランスの顔でも見てきたら?」
バレス「すまんのう。では、その言葉に甘えて、よっこらしょ・・・っと」
 本当にジジイくさいぞ、バレス! 見送る志津香も呆れ顔だ。しばらくバレスが見えなくなるまで見送って、
志津香「ふう、これからはあたし一人で捕まえなくちゃ行けないんだよね」
 つぶやく志津香。
志津香「あたしって、そんなにかけっこ速くないしなぁ・・・そうだ! またアレ使おっと」
 志津香の視線の先には着ぐるみハニーが。
志津香(お外で着たらダメなんだけど、一度使っちゃったし、二回使っても同じよね。
     アレの中にはいって待ち伏せして・・・ よし、きーまり)
というわけで、志津香は再び着ぐるみに向かって歩き出した。ん? いま、着ぐるみがうごいたような・・・? 
志津香(あれぇ・・・?)
 いやっ、確かに動いたぞ! 走り出す志津香、ああっ、またまたハニーが動いたー。
志津香(中に誰かいるんだっ!)
 ハニーのまえにでーんと立つ。勝ち誇った声で、
志津香「こらっ、中にいるのは分かってるのよっ! さっさと出て来なさいっ!」
ハニー(小声で)「はわわわ、ばれちゃったよう」
ハニー「シィルちゃん、どうしよう?」
ハニー「じっとしてよう。動いちゃダメだよ」
ハニー「う、うん」
 いまさら無理だ! 声まで出しちゃ、中にいるのが誰かもバレバレだぞー。
志津香「シィルちゃん、マリアっ! ちゃっちゃと出てくる!」
ハニー「は、はいっ!」
 もぞもぞもぞもぞ
シィル「えへへ・・・」
マリア「あはは・・・」
 パンパンパン*2
志津香「はいっ、二人とも逮捕ねっ。はああ、こんなにあっさりしていいのかな?」
マリア「うまく隠れたって思ったのになぁ」
シィル「すぐばれちゃったね」
志津香「ふう、疲れた。でも、なんでハニーなんかに隠れたの?」
マリア「なんとなく」
シィル「かな?」
志津香「・・・どうでもいいわ。とにかくっ、これで二人とも捕まったんだからねっ いまから牢屋に連れて行きまーす」
シィル「やっと、ランス様と一緒になれるね」
マリア「え、あ、そうだね」
志津香「えっ? 二人ともランスが捕まったって知ってるの?」
マリア「うん。志津香が着ぐるみから出てくるとこ、二人で見てたんだよ。
     ランスちゃん捕まえた志津香、すっごく嬉しそうだったよねー」
シィル「それでね、あたしたちも中にはいってみたくなったの」
志津香「ふーん、そっか。で、どうだった、あのなか?」
マリア「え?」
志津香「重いし、変なにおいがするし、やな感じだったでしょ?」
マリア「そうかな? あたしはそんなに嫌じゃなかったよ」
マリア(ランスちゃんの匂いがしたから・・・かなぁ)
シィル「志津香ちゃん、牢屋にいこっか」
志津香「二人とも素直ねぇ・・・ ランスとは大違い」
 と、いうわけで、ミル逮捕にランス君がぶーぶー言ってた頃、シィル&マリアもしっかり逮捕されてたんですねー。


エクス「バレスさんも帰ってきたし、後は志津香さんだけかな。ランス君、助っ人誰にするか決めた?」
ランス「チッ、余裕だな。まだ二人捕まってないんだぞ」
リック「確かに。あとはマリアちゃんとシィルちゃんか」
ミル 「ランスがシィルちゃんより先に捕まったのは意外だったね」
ランス「ぐぬぬ・・・」
ラン 「最後まで捕まらないって思ってたのにね」
ランス「・・・ふんっ!」
ランス(見てろ、俺様とっておきの作戦で完璧に逆転してやるからなっ)
 ランス君、なにか企んでいるのかっ? しかし、この状況でいったいなにができるんだい?
レイラ「あれは? 志津香ちゃんと・・・ねえ、あそこみてよ!」
エクス「あそこ? ああ・・・どうやら終わってしまったようですね、ランス君?」
ランス「なにぃ? げげっ、志津香と、シィルにマリアちゃんだぁ?」
ミル 「ホントだ」
ラン 「みんな捕まっちゃったね」
ランス「いや、まだだっ。あと一人助っ人を頼めるんだ!」
エクス「志津香さんがOKしたらですけれど」
 そう、例の提案だ。すでにエクス達全員がOKを出していて、後は志津香がうなずけばいいのだ。
 リックとレイラは、『確かにランス君のいうことにも一理ある』ということでOK。
 バレスは『ランス殿についてゆきますぞ』ということでOK。     
 ハウレーンは『エクスがいいというのなら』ということでOK。
 エクスは『さてさて、ランス君の機転を見せてもらいましょうか』ということでOK。
志津香「あー、ミリもランちゃんも捕まってるんだー」
レイラ「ええ、あたしとリックで捕まえたのよ」
志津香「ってことは・・・? もしかして?」
エクス「はい。僕達の完全勝利ですね。志津香さんの活躍のおかげです」
リック「キングを捕まえるなんて・・・ 凄いことだよ」
バレス「そのうえまた二人とはのう」
 その場にいるみんな(ランス君以外)が志津香を褒めてるぞー。志津香もまんざらじゃないみたいだね。
志津香「えっ、えーと、運よ、運!」
 ニコニコしている志津香にランス君が顔を向けたぞ。
ランス「そうだ! 運だっ。というわけで、志津香! 俺様のアイデアに賛成しろっ」
志津香「なによ、うっさいわね! あたしに捕まったくせに偉そうにしないっ」
ランス「とにかく、賛成しろよな」
志津香「? な、何よ、賛成って・・・」
エクス「実は、かくかくしかじか・・・」


 ジャングルジムの前、ランス盗賊団を全員捕らえた警察チームは、ただいま会議の真っ最中だ。
志津香「なーによ、こっちにいいこと何にもないじゃない」
エクス「まぁ、それをいってしまえばそうなんですが」
志津香「そんなの、なんでいまさらランスが言い出すのよ。チームわけのときにいうことよ」
エクス「確かに」
ランス「おい、馬鹿志津香・・・」
志津香「うっさい、ランスっ。あんたは黙ってなさいっ」
ランス(・・・なんであんなに態度がでかいんだろう・・・さすがに温厚な俺様もむかつくぞ。ようし・・・)
エクス「でも、たしかに人数上の不利はあったということで、志津香さん以外はみんなランス君に賛成したんですよ。
     もちろん志津香さんが嫌といったら、これはなかったことにして、僕達の勝ちになるんです」
志津香「うーん・・・、別にそうしてもいいけどね〜 いまさら一人増えたって、簡単に捕まえられそうだし・・・」
 考え込む志津香。みんなが静かになったとき、ランス君が口を開いた。
ランス「おい、どうせなら罰ゲームをつけようぜ?」
 えっ? な、何を言い出すんだランス君! 
エクス「はあ?」
ランス「俺様が一人助っ人を指名する。もしお前らがそいつをつかまえたら、俺達の負けだ、罰ゲームを受けてやるぜ。
     ただし、そいつをふくめて俺達全員を捕まえられなかったらそっちの負け。お前達が罰ゲームだ」
ラン 「ちょっと、ランスちゃん!」
マリア「ダメだよ、そんなの!」
ランス「ええい、俺様を信じろ! ちゃんと作戦はあるんだっ」
エクス「・・・罰ゲームの内容は?」
ランス「決まってるぜ! 負けたほうは勝ったほうのいうことをなんでも一つ聞くんだ!」
志津香「えっ、ちょっとまってよっ。あたしたちが勝ったら、ランスが何でもいうこと聞くのっ?」
ランス「ふんっ。その代わり、お前達が負けたら、俺様のいうことを聞くんだぞ」
リック「しかし、キング。どうかんがえてもそっちが不利な気がするけど・・・」
シィル「ラ、ランス様ぁ〜」
志津香「のったぁ! いいわよ、決定! ねっねっ、みんなもいいよねっ?」
エクス(ランス君がこんな無謀なことをいうなんて・・・誰を助っ人にするつもりなんだろう?)
バレス「儂はかまわんぞ。ランス殿に命令するもされるもまた一興・・・ぽっ」
ハウレーン「エクスがいいなら、かまわない」
リック「僕もOKだ」
レイラ「あたしも」
志津香「エクスくんっ、エクスくんもかまわないでしょっ? 大丈夫よ、あと一人くらい簡単よ!」
エクス「少しひっかかることがありますけど・・・ まあ、別にいまさら・・・」
志津香「きっまりー。というわけで、ランスっ! 誰を助っ人にするのか早くいいなさいっ」
ミル 「お、おい、ちゃんと考えてるんだろうな?」
ランス「ふっふっふ。まかせとけ、俺様の灰色の脳細胞はアイツを選べといっている!
     それじゃあ、助っ人の名前を言うぞ!」
エクス(まてよ、たしか魔人組に新しく入った転校生で、すごい人がいたような・・・ あ、しまったっ!)
エクス「ちょっとまっ・・・」
ランス「魔人組のメガラスだ! おーい、メガラスー、こっちへこい!」
バレス「メガラス・・・?」
エクス「あぁ、やっぱり・・・」

 メガラス(5)・・・存在感があるのかないのか分らない魔人組の転校生だ!
 5歳にして国体4位の記録を持つスーパー園児、通称『音速の魔人組』だあっ!
 普段は小鳥の世話ばっかりしている無口な園児、それゆえにエクス達は完全に忘れていたのだっ。
 ジャングルジムからすこしはなれた鳥小屋の前、ランスに呼ばれてこっちをみているぞ。

ランス「たったいまからメガラスはランス盗賊団にはいった! わははは、アイツは速いぞー。どうだ、まいったか!」
シィル「でも、でもでもランス様、メガラスちゃんは入るっていってないよ?」
ランス「え?」
エクス「そうか! よし、リック! とにかくメガラス君の背中を叩くんだ!」
リック「・・・なるほど。レイラさん、いくよっ」
レイラ「うん、わかった!」
ランス「え、え?」
ミル 「ランスが勝手に入れただけで、メガラスは分ってないんじゃないのか?」
ランス「・・・おお!」
マリア「ラ、ランスちゃ〜ん」
ランス(ちっ、しまったぁ。そこまで考えてなかったぜ! こうなりゃ、一か八かだっ)
 メガラスはといえば、走ってくるリックとレイラをみているだけ。当然逃げようとはしない、そりゃそうだ。
 おおっと、ランス君が身を乗り出してなにか叫んだぞ?
ランス「メガラス! ここに『マッハピヨ』がいるぜっ 一緒に触ろうぜー」
メガラス「・・・」
 ピクリと反応したメガラス、ランス君に向かって走り始めた!
ランス(あいつがマッハピヨ好きだってのは知ってるんだ。よし、来い来いこーい!)
 速いぞメガラス! リックとレイラをふりきって、あと五メートルでランス君だ!
志津香「させないっ」
バレス「通しませんぞ!」
メガラス(・・・ハイスピード)
 シャシャシャッ
志津香「あれっ」
バレス「ぬおう?」
 ナイスステップで二人をぬいたぁっ つづいてさらに二人をかわす!
エクス「くそっ」
ハウレーン「ひゃあ?」
ランス「わははは! ここだここ〜」
 メガラスついに六人抜きだ。ランス君のところに駆け寄って、
メガラス「・・・」
 無言で手を出すメガラス。差し出された手を、
 パンッ
ランス 「よっしゃあ、ナイス!」
メガラス「・・・」
ランス 「マリア達もさっさと逃げろよ、わはははは!」
 ランス君がハイタッチだ。立っているメガラスを尻目に逃げる、逃げる!
メガラス「・・・」
 ごめんよ、メガラス。ランス君は嘘つきなんだよ・・・『マッハピヨ』はいないんだ。
エクス「いまだ!」
 パンパンパン
エクス「ふう、ごめんよメガラス君、理由はあとで説明するから・・・」
 あーあ、メガラスまでつかまっちゃった。
メガラス「・・・」
エクス「実はね、さっきのは・・・」
 
 しかしっっっ、メガラスのおかげでこいつは脱出成功だ! 

ランス「わはははは! 俺様は自由だぜ!」
 後ろのほうから、
志津香「ランスっ、待ちなさいよっ」
リック「キング、捕まえてみせる!」
ランス「べろべろべー、やれるもんならやってみやがれ! 見てろっ、なにがなんでも逃げ切ってやる!」
ランス(俺様の実力をみせてやるぜっ
     逃げて逃げて逃げ切って、あんの馬鹿志津香やレイラさんにあんなことやこんなことを・・・えへへへ〜)
 逃げる逃げる逃げるっ、速いぞランス君! 追っ手との距離は離れる一方だ、頑張れランス君、負けるなランス君!
 お昼まではあと三十分だぞっ
志津香「ぜったい捕まえてやるんだからっ!」
 リーザス幼稚園に元気な声がこだまする。朝から夕方までこだまする。今日も今日とて元気な声の中心には、
「わはははは!」
 緑色の少年の声が響いているのだった・・・






・・・あとがき・・・
 鬼畜幼稚園R 『ランス君捕まる!』 どうでしょう?
 初めて副題どおりな展開が書けたので、個人的にはかなりよかったかな、と。
 まあ、メガラスの辺りとか、無茶苦茶強引になっちゃって、反省点は数多くあるんですが。
 というか、反省点を挙げたらきりがないです。いいんです! 楽しんで書けたから、自分的には合格なんです! 
 今回、前・中・後の中に当たる部分です。次回、最終回ですね。
 『ランス君燃える!』ってな感じになります。次回もよろしくお願いしまっす! (冬彦)



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